ジャポニスム以降、すなわち19世紀末から太平洋戦争前の時期における日本での浮世絵についての評価をめぐって、欧米の浮世絵研究をどのように参考にしつつ、時期により言説をはぐくんだのかを調査をした。 まずはフランスでの大規模連続浮世絵展開催を機会に、欧米での研究がどのように進められ深められたか、日本側でそれを受けていかなる反応をしたかなどこれまでの自身の研究を発展させて、その結果を「<見せたい>日本美術とは ~パリ装飾芸術美術館連続展覧会を中心に~」のタイトルで「神奈川県立図書館第24回 大学で学ぼう~生涯学習フェア~」で発表した(2021年7月11日)。さらに日本の西洋美術研究でのジャポニスムの扱われかたについて、澤木四方吉や板垣鷹穂などの西洋美術史研究の著書、白樺派の評論を調査した。これは浮世絵コレクションや工芸のデザインへの反映、ポスト印象派の画家たちへの影響も含む。その際に1930年代に永井荷風の浮世絵研究が小林太一郎などに引用され、参考にされてきたことが具体的に分かった。これはジャポニスム学会編『ジャポニスムを考える 日本文化表象をめぐる他者と自己』、第3章「近代日本における美術史上の「ジャポニスム」への認識」にまとめた。同時に、従来荷風の浮世絵研究を収めた『江戸芸術論』は、国内でのジャポニスム研究年表のトップにおかれてきたが、その意義は明らかにされてこなかったので、本論は荷風研究とジャポニスム研究にも寄与するものとなる。 さらに荷風に関しては「永井荷風『日和下駄』の東京―重層する時空間」のタイトルで公益財団法人日本近代文学館(2021年4月17日)で、その浮世絵研究が著書にいかに応用されているかを説明した。小島烏水については、英語文献を踏まえた作品記述が明らかになってきており、今後論文として発表する予定である。
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