研究課題/領域番号 |
17K02469
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研究機関 | 金沢学院大学 |
研究代表者 |
秋山 稔 金沢学院大学, 文学部, 教授 (20202559)
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研究分担者 |
田中 励儀 同志社大学, 文学部, 教授 (90148619)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 「湯島詣」草稿 / 俳句草稿 / 紅葉門下の句会 / 「南地心中」 / 住吉大社宝の市取材メモ / 「夜叉ケ池」上演台本 / 戯曲「通夜物語」草稿 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、勤務校の紀要に「泉鏡花「湯島詣」の草稿」、「鏡花研究」14号に「鏡花と句会」を発表、秋刊行の『論集 泉鏡花」に「鏡花と俳句」を掲載予定である。「湯島詣」の草稿1枚を発見して草稿の配列を再検討し、別稿12枚を確認、慶應義塾図書館蔵の草稿の一部との連続を確認した。また、俳句の草稿309枚を整理、紅葉・鏡花・洒亭・秋声・春葉悠々などが参加した句会を翻刻して「鏡花研究」に掲載。俳句と小説・随筆との連関、明治30年前後の内藤鳴雪による添削などを考察、「鏡花と句会」にまとめた。 研究分担者は、戯曲や演劇化された作品の原稿や台本、取材メモなどの調査研究を行なった。花柳小説「南地心中」を著すに当たって、住吉大社宝の市を見物し、3枚の取材メモを残した。メモには、鏡花が目にした練行列の扮装や巡行経路のみならず、足を運べなかった住吉大社での神事の式次第まで記されている。記述が正確であることを、郷土史や神社関係文献との比較を通じて明らかにし、2019年12月、勤務校の「同志社国文学」第91号に「泉鏡花「南地心中」取材メモ―明治四十四年の住吉大社宝の市」として発表した。また、「夜叉ヶ池」が初演された際の台本に鏡花が加筆修正を施した新出資料を検討し、演出者が考えた場割の変更を受け入れて円滑な場面転換をめざした共同作業の実際を明らかにした。 2020年5月発行の「国語と国文学」第97巻第5号に「泉鏡花「夜叉ヶ池」の上演―台本への書き込みと自筆原稿の挿入」として発表した。さらに、花柳小説「通夜物語」を戯曲形式に改めた自筆原稿15枚を新しく見出し、鏡花が余所事浄瑠璃を活用して舞台情緒を高める工夫を凝らしたことなど、自作の上演に深く関わっていた様子を論じた。2020年9月発行の「昭和文学研究」第81集に「泉鏡花「通夜物物語」上演―原作者と脚色者の関係をめぐって」としての掲載が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、今年度中に草稿類の検証を終えることとしていたが、三千句を超える俳句の草稿の整理と検証に想像以上の時間を費やし、タイトルのない断簡類整理が若干残っている。書簡、特に来簡、メモなどの直筆の資料の整理が残っている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、最終年度であり、以下の二点についての研究のまとめを行なう。 (1)「泉名月氏旧蔵資料自筆原稿目録・解題」(仮題)の作成 4年間の資料の整理、検証の集大成として自筆原稿目録を作成する。研究上の意義の高い草稿類を中心に、基本情報を掲載する。タイトル不明の草稿についても、解題を付す予定で、年度末の完成をめざす予定である。 (2)論考の作成 研究のまとめとして、「蝦蟇法師」「怪語」「俳句「縷紅新草」「りんどうとなでしこ」「卯辰新地」「露宿」「化鳥」などを取り上げた論考を作成する。 「自筆原稿目録」に上記作品の論考を収録し、目録の意義付けを図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、研究のまとめとなり、出費が増える可能性がある。調査研究に生かしたい。
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