研究課題/領域番号 |
17K02469
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研究機関 | 金沢学院大学 |
研究代表者 |
秋山 稔 金沢学院大学, 文学部, 教授 (20202559)
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研究分担者 |
田中 励儀 同志社大学, 文学部, 教授 (90148619)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 俳句草稿 / 生前発表句 / 太陽俳句欄 / 夜叉ケ池 / 通夜物語 / 上演台本 |
研究実績の概要 |
新型コロナ感染症の拡大により研究出張、調査、対面による打ち合わせができないため、補助期間の延長申請を行なった。資料集の作成を2021年度に行なうこととし、2020年度は、研究を整理し、論文や資料の発表に専心した。 研究代表者は、『泉鏡花俳句集』を11月に紅書房から刊行した。句会の草稿・俳句草稿など、71句を新たに紹介。内藤鳴雪の添削・蕪村七部集の筆者・物語性・恋愛句と女性美の追求について考察し、解説した。「金沢学院大学紀要」第19号(2021年3月)には、「泉鏡花・発表俳句一覧」を発表。随筆や書簡収載の句を除く、生前の発表句745句を、重複を含めて一覧にし、通し番号を付し、草稿五の画像を参考として掲載した。泉鏡花記念館の年報、「雪うさぎ」第16号(同前)には、「『泉鏡花俳句集』編輯余話」を発表し、「太陽」(明治29年3月5日刊)の草稿と活字の画像を比較、鏡台が、鏡花である可能性を指摘した。 研究分担者は、主に戯曲について泉鏡花の自筆資料の調査を進め、「泉鏡花「夜叉ヶ池」の上演―台本への書き込みと自筆原稿の挿入―」(「国語と国文学」第97巻第5号、2020年5月、東京大学国語国文学会)、「泉鏡花「通夜物語」の上演―原作者と脚色者の関係をめぐって―」(「昭和文学研究」第81集、2020年9月、昭和文学会)を発表した。「夜叉ヶ池」論では、鏡花の戯曲を基に演出家が脚色した初演台本に、原作者鏡花が改めて加筆した実態を検証した。「通夜物語」論では、鏡花の小説を基に演出家が脚色した台本で上演が重ねられていた中で、原作者鏡花自身が複数の〈幕〉や〈場〉を著した実態を検証するとともに、その後の上演史にも言及した。原作者・脚色者・劇団・劇場など、さまざまな関係者によって成り立つ、近代演劇の諸相を明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究出張による資料確認や対面による資料調査及び検討が予定通りにできなかったため、最終年の最終目標である論文・資料集の編集ができなかった。 研究代表者は俳句集の編集と俳句一覧の作成、小論の三件の編著、研究分担者は二論文を発表した。研究成果の発表という点では順調であったが、1年延期せざるを得なかったのは、遺憾であった。
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今後の研究の推進方策 |
泉名月氏旧蔵資料の作品草稿を中心とする資料目録の作成は、修了している。 研究代表者・研究分担者が分析・考察する作品は決定しており、それぞれが論考を準備している。論考を含めた資料集を年度内にまとめることが、課題である。 遠隔での打ち合わせを行うとともに、国会図書館その他への研究出張や泉鏡花記念館での研究を進めて、所期の目的を完遂させることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大のため、研究出張などができなかったために補助期間延長を申請して、成果報告書である資料目録・論稿の印刷を次年度に行うこととしたため。
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