最終年度は、研究の集大成として研究分担者と共に力をあわせて調査と分析考察を行ない、令和5年3月「泉名月氏旧蔵、泉鏡花未調査資料の実証的研究 研究成果報告書」(本文115ページ)300部を作成し、国立国会図書館などの公立図書館、大学図書館、鏡花研究に携わる関係先に送付した。 研究成果報告書は、「泉家資料、自筆原稿等目録」(秋山稔・田中励儀・穴倉玉日編)に続いて、〈論考と資料紹介〉として、「俳句資料翻刻ー発表俳句と紅葉の添削等」(秋山)、「「蝦蟇和尚」から「蝦蟇法師」へ」(秋山)、「翻刻・「蝦蟇法師」原稿四種」(秋山)、「「湯島詣」の上演」(田中)、「俳句紀行「左の窓」の世界」(秋山)、「「お化け手帳」の翻刻」(秋山)、「「深沙大王」の上演」(田中)、「「蒟蒻本」の成立」からなる。配列は、成立順・発表順とした。 「自筆原稿目録」は、岩波書店版『新編泉鏡花集』別巻二「自筆原稿所在目録」(秋山編)に準じて、表題・発表年月、自筆原稿の題名、紙質・枚数・墨書・ペン書の別を記載したもので、発表作品62種に、俳句を加えている。この他にタイトルのない断簡や作品名の判然としない原稿があるが、今後の検討課題とした。 研究代表者は、俳句関連の画像を紹介するとともに、「蝦蟇法師」の別稿48枚を確認して、「蝦蟇和尚」、A稿、B稿、富山版「蝦蟇法師」に整理し、翻刻すると同時に分析と考察を加えて、境界的な存在が「聖なる趣」を得て本来の時空に帰還する物語としての本作が明治29年以降の幻想空間の成立に重要な意味を持つのではないかと指摘した。 研究分担者は、ひきつづき主に戯曲について調査し、鏡花初の戯曲「深沙大王」、花柳小説を戯曲化した「湯島詣」、及び奇想あふれる短編小説「蒟蒻本」それぞれの自筆原稿を整理し、論考とした。
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