研究課題/領域番号 |
17K02472
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
瀬崎 圭二 同志社大学, 文学部, 教授 (70413284)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 佐々木基一 / テレビ芸術 / 記録芸術の会 / 谷川俊太郎 / 「あなたは誰でしょう」 |
研究実績の概要 |
本研究課題において2019年度に公表した研究成果は2点ある。 一つは、鳥羽耕史・山本直樹編『転形期のメディオロジー 一九五〇年代日本の芸術とメディアの再編成』(森話社 2019年9月)に収録された論考「佐々木基一の『テレビ芸術』とテレビドラマ アクチュアリティの追求」である。本論文では、文芸評論家の佐々木基一が1957年に出版した『テレビ芸術』を主要な分析対象として、1950年代後半に生成していた多くのテレビをめぐる議論の中に『テレビ芸術』を据え置き、佐々木が『テレビ芸術』の中で展開していた方法が実際のテレビドラマ制作の中でどのように実践されていったのか考察した。当初見られていた佐々木のテレビへの期待が、テレビ業界の変質と共に徐々に失望へと変わっていったプロセスも明らかになった。 もう一つは、2020年3月にゆまに書房から出版された『谷川俊太郎 私のテレビドラマの世界―『あなたは誰でしょう』』の企画、編集である。この本は、本研究課題の主要な研究対象である雑誌『テレビドラマ』(1959年9月~1965年12月)の編集委員を務めていた詩人の谷川俊太郎氏に当時のお話を伺うインタビューに端を発しており、現在確認できる全ての谷川氏のテレビドラマ脚本を収録したものである。インタビューの中で明らかになったことを追跡調査することで本研究の問題意識が拡大し、谷川氏が所蔵されていたいくつかの未公開資料に接することができたことが大きな研究成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度の研究成果は、いずれも出版された書物として公表することができた。これらの企画は、いずれも本研究を開始した時点では想定していなかったものであり、書物として出版することで学界内だけでなく、広く一般にも本研究の関心を伝えるきっかけを作ることができた。本研究を通じて、同様の関心を持つ隣接諸領域の研究者と一つの研究成果を提示することができたことに加え、本研究が対象とする時代の当事者と共に一冊の書物を刊行できたことは、当初の計画以上の成果であると判断して良い。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、本研究課題の研究期間の最終年度にあたる。これまでに発表してきた多くの論考を再検討し、未発表の論考と併せて、テレビ文化黎明期における文学者の動向を一冊の研究書として出版することが2020年度の目標となる。そのための作業や最終確認を行うことが今後の課題である。
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