2019年度については、渡辺去何著『古巣俳諧集』を翻刻し、入集俳人の年譜事項をまとめた。これによって、芭蕉顕彰資料のうちの京都俳壇と密接な関係にある近江俳人の概観が明らかになった。同資料はWEBでも公開している。また、『近世後期京都の芭蕉顕彰俳諧資料 芭蕉堂歴世の俳諧と花供養』をまとめ、芭蕉堂初世闌更、二世蒼キュウ、四世朝陽の点印を中心に俳諧活動資料を収集した。近世後期京都俳壇の屋台骨となる花供養の一部を翻刻し、花供養会の概観に考察を加えた。同資料と論考はWEBでも公開している。さらに、俳文学会第七一回全国大会において、「淀藩士の俳諧と芭蕉顕彰」と題して研究発表を行った。近世後期における武士層の俳諧については継続して研究中であるが、その一端を公表して多くの助言を得た。 2018年度については、渡辺去何著『古巣発句集』を翻刻し、解題を付してまとめた。同資料は、『古巣俳諧集』と同様に京都俳壇、とりわけ芭蕉顕彰活動の中心となる五升庵蝶夢の俳諧を読み解く上で有効な作品集である。また、『堀秦夫句集「秦夫草」翻刻と南山城の俳諧 秦夫草』では、京都俳壇、芭蕉堂闌更と密接な南山城の俳諧について考察し、「秦夫草」を翻刻した。同資料からは芭蕉顕彰の動きを側面から考察できる。なお、上記の二資料はWEB公開している。 2017年度については、芭蕉顕彰資料の中心となる『芭蕉堂門人禄』を影印と翻刻で紹介し、WEBでも公開している。門人帖の存在が新情報であり、研究の基礎となる極めて重要な芭蕉顕彰資料の一つである。また、俳文学会第六八回全国大会において、「松岡青蘿の伝書『俳諧点之格』考」として研究発表を行ったものに加筆訂正を行い論文発表した。青蘿も蝶夢に従って芭蕉顕彰に追随したことを明らかにした。 以上のように芭蕉顕彰資料の基礎的な収集を多角的に遂行し、一部については考察などの研究を加えることができた。
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