研究課題/領域番号 |
17K02478
|
研究機関 | 相愛大学 |
研究代表者 |
荒井 真理亜 相愛大学, 人文学部, 准教授 (90612424)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 日本近代文学 / 上司小剣 / 書誌 / 出版 / メディア |
研究実績の概要 |
上司小剣の著作の全貌を明らかにするために、第3年目は大正期の著作を中心に調査を進めた。 上司小剣は1914年に発表した「鱧の皮」によって文壇における作家的地位を確立し、一躍花形作家となって多くの雑誌や新聞に著作を発表した。そこで、まず「鱧の皮」が掲載された『ホトトギス』をはじめ、『文章世界』『新潮』『中央公論』『早稲田文学』『解放』『改造』等の雑誌の調査に着手した。これらの雑誌に発表された著作はだいたい確認することができた。主要な著作については内容を分析し、解題の執筆を進めた。上司小剣は明治期に好評を博した「その日その日」に続き、大正期にも『読売新聞』に「小さき窓より」や「一日一信」などのコラムを載せている。『読売新聞』には評論や随筆、文芸時評なども多数発表している。上司小剣が大正期に『読売新聞』に執筆したコラムや記事はだいたい収集することができた。また上司小剣は読売新聞社退社後、複数の新聞に連載小説を書いている。新聞連載小説については『朝日新聞』『毎日新聞』から確認を進めていった。 しかし、冬からの新型コロナウィルス感染症流行のため、令和2年2、3月に予定していた調査は中止せざるを得ず、上記以外の雑誌や新聞の調査ができなかった。同じく2、3月に予定していた口頭発表も会自体が中止になったため行えなかったが、『福岡日日新聞』や『九州日報』に関する長田幹彦宛上司小剣書簡についての研究成果は『人文学研究』5号(2020)に発表することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第3年目は大正期の著作を確認する作業を進めた。 『ホトトギス』『文章世界』『新潮』『中央公論』『早稲田文学』『解放』『改造』等の雑誌、『読売新聞』『朝日新聞』『毎日新聞』の調査はだいたい終了した。 しかし、新型コロナウィルス感染症流行により、令和2年2、3月に予定していた他府県への移動を伴う調査や近隣図書館での調査は取りやめにせざるを得なかった。そのため、当初の調査計画に遅れが生じており、大正期の著作目録も完成には至っていない。 同じく2、3月に予定していた研究発表も、会自体が中止になったので行うことができなかった。研究成果については令和2年度に発表することを検討中である。
|
今後の研究の推進方策 |
第4年目は昭和期の著作の調査に着手する。引き続き国立国会図書館や日本近代文学館等を利用し、著作の現物を確認して、書誌情報を収集する。 上司小剣は昭和期にも「平和主義者」や「蜘蛛の饗宴」など、注目すべき小説を書いている。晩年に刊行された『上司小剣選集』に収録された作品については背景も調べた上で解題にまとめる。また、大正末期から上司小剣は多くの歴史小説を執筆している。『西行法師』『余裕』『生々抄』『伴林光平』『菅原道真』に収められた歴史小説の初出を調査するとともに、上司小剣の歴史小説の特徴を明らかにしたい。 蓄音機とレコードに関する随筆を集めた『蓄音機読本』や、戦時下の社会への批判や風刺、四季折々の感慨、人物に関するエピソードなどを収録した『清貧に生きる』などの随筆集についても内容を分析し、解題を執筆する。さらに上司小剣は昭和期になると『読売新聞』だけでなく、『新潮』や『文芸春秋』等の雑誌にも積極的に評論を発表する。社会・文芸・風俗等に関するこれらの評論も収集していく。 あわせて第3年目に終わらなかった大正期の著作に関する調査も行う。地方紙や週刊誌などに発表した著作を確認する必要がある。 大正・昭和期に発表された小説、随筆、評論、アンケート等について、収集した書誌情報を整理し、著作目録を作成することを第4年目の目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年2、3月に予定していた調査が、新型コロナウイルス感染症流行のために実施できず、旅費が支出されなかった。そのために生じた次年度使用額は、令和2年度に行う調査で執行する予定である。
|