研究課題/領域番号 |
17K02480
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
森田 雅也 関西学院大学, 文学部, 教授 (10239668)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 日本古典文学 / 西鶴 / 上方文学 / 地方俳壇 / 談林俳諧 / 都市と地方の交流文化 / 日本近世文学史 / 江戸時代の海川物流網 |
研究実績の概要 |
西鶴忌記念会において「西鶴と地方流通文化圏」と題して講演を行った(西鶴忌実行委員会,2020.9.13,於 西鶴菩提寺誓願寺)。特に17世紀後半の「都鄙を結ぶ物流ルート」に注目し、「年貢米・廻米等米商人ルート」「古着問屋ルート」「塩運搬ルート」「参勤交代ルート」など13のルートの例をあげ、それらに地方俳諧文化圏の人々が関わり、海運・川運流通網を利用して大坂など三都俳諧文化圏と巧妙に繋がっていたことを論じた。加えて、西鶴に川船を詠み込んだ句が多いことを例証した。 また、江戸時代の津軽藩、及び青森県南西部の海運・川運・湖運の発展と俳諧等文学の発展形成の関係について現地調査を行った(2020.8.19~8.21)。具体的には「あおもり北のまほろば歴史館」「青森県立郷土館」「十和田湖民俗資料館」「弘前市立博物館」「弘前市立郷土文学館」などで調査を実施した。 学術論文として、1.単著「東アジアにおける南蛮黒船来航と外交危機―十六世紀から見る日本の近世文化形成―」 (『東アジア比較文化研究「東アジアのネットワークと日本の近世化」』)により、17世紀日本の経済・思想・文学の形成に大きく影響を与えた16世紀の日本の外交意識・世界思想について南蛮船とキリスト教の渡来に起点を求めて論じた。編著単著論文として、2.「海賊と海商」(染谷智幸編『東アジア文化講座Ⅰ はじめに交流ありき-東アジアの文学と異文化交流―』)では、日本の文化が海賊とも海商とも呼ばれる東アジアの周辺の人々との交流から形成されたことを論じた。1.2.ともに東アジア海洋文化が流通網の発展とともにあり、17世紀日本文化の文学を含めた基盤形成に関係したことを論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
17世紀江戸時代の地方海川物流拠点に俳諧文化圏、特に談林俳諧圏が存在し、当時、天下の台所として君臨していた物流拠点大坂と人的・物的交流を行い、大坂を中心とした上方文壇と盛んに連繋してきたという実態について現地に赴き調査し、その成果を講演会、学会、研究会で報告し、さらにそれを学術論文、ホームページなどで公表してきた。その進捗状況は2019年度前半までに当初の予想以上より進展したと言える。 しかし、予期せぬコロナ感染の拡大は2019年度後半より長期に及び、2020年度の年度計画はほとんど果たし得なかった。2020年度の地方俳諧文化圏の現地調査計画は以下の3つの地域の江戸時代海川物流圏の調査をあげていた。1.東北地域北側における俳諧文化園の調査(青森・弘前・旧南部藩)。2.東海道東地域の調査(静岡・伊豆半島)。3.奈良俳諧文化圏の調査(奈良市・大和郡山・天理市等)であったが、1.(旧南部藩)を除いて、コロナ感染拡大による移動制限の自粛下となり、2.3.はまったく達成できなかった。 また、今までの調査結果について、より専門的知見を得るために、学会、研究会において公開発表の場を得、論文化する予定であったが、多くの研究活動が中止となり、それらの発行する学術雑誌も発行停止等となり、研究成果の公表の場が奪われた。 以上の理由によって大幅な計画遅延となった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は2021年度が研究最終年度であるが、当初の研究計画は以下の5点であった。 A.江戸時代前期の西廻り航路地域における談林及び海運・河川物流網を中心とした俳諧文化圏の現地調査の補完を行う。B.江戸時代前期の東廻り航路地域における談林及び海運・河川物流網を中心とした俳諧文化圏の現地調査の補完を行う。C.江戸時代前期の四国・九州航路地域における談林及び海運・河川物流網を中心とした俳諧文化圏の現地調査の補完を行う。D.井原西鶴の浮世草子作品などを中心とした上方文壇について、その文学史的意義を解明するとともに、その研究成果を論文化あるいは研究発表・講演等することによって、広く学術的成果を公開する。E.上方文壇と地方談林俳諧文化圏との繋属関係を明らかにし、結論としてまとめた成果をデータ利用として汎用性の高いホームページにupし、一般公開をする。 しかし、コロナ感染拡大による移動制限により、2021年度上半期も調査再開の目処は立っていないため、計画していたA.B.C.の各々現地調査の補完作業を変更して、2017~20年度に研究調査を計画しながら、遺漏していた地域の現地調査をする。それは当初、2017年度に予定していた「知多半島・渥美半島」、2019年度に予定していた奈良を含む大阪近郊、2020年度に予定していた関東内陸部「山梨・甲府・都留」の俳諧文化圏グループと上方文壇との繋属関係の調査である。これらの調査結果を含めてD.E.の手順で研究成果の公開を行う。 また、研究成果のデータ入力の効率化を図るため、業者委託などの対応を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ感染拡大により、移動制限があり、多くの現地調査研究の予定が取りやめとなり、調査は次年度に延期されたため、旅費及び現地での資料・消耗図書などの購入にあてる物品費を次年度に繰り越しせざるを得なくなった。次年度は延期された現地調査の旅費及び資料・消耗図書などの購入費として使用する。
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