研究課題/領域番号 |
17K02481
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
後藤 博子 帝塚山大学, 文学部, 教授 (80610237)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 浄瑠璃 / 歌舞伎 / 大和郡山藩 / 鳥取藩士 / 演劇文化 / 地方文化 / 森藤十郎 / 柳沢信鴻 |
研究実績の概要 |
コロナ禍の影響で柳沢文庫での調査や撮影、鳥取県立博物館などでの追加調査が不可能で、計画通りに実施することは困難だった。 ただし、昨年度までの調査で収集した資料について、特に鳥取藩士森藤十郎の日記(鳥取県立図書館所蔵)と松平美濃守日誌(柳沢文庫所蔵)の翻刻作業を進めながら、内容の研究を行った。 森藤十郎が江戸に赴任していた元禄期に藩邸で催されていた浄瑠璃・歌舞伎についての記事、さらに芝居町での歌舞伎観劇の記事について、上演記事として読み取れる情報から、具体的な役者の動向や歌舞伎の演目の上演実態などを究明することができた。本年度中には論文として公開するには至らなかったが、明らかになった事柄が複数あり、研究成果としてまとめている段階である。 松平美濃守日誌については、大和郡山藩主柳沢信鴻が在国中に大阪から浄瑠璃太夫を呼んで稽古をしていた実態に注目される。本年度は日誌全体の翻刻作業を行い、併行して日誌に記載された浄瑠璃の演目名について具体的な検証を進めた。大阪の浄瑠璃界における演目の初演時期推定の手がかりになる情報も得られた。加えて、大和郡山藩という地方にあって、大阪の都市演劇文化をどのように享受し、摂取していたか、具体的に確認することができる。記載されている演目名も多数で、事例の分析は途上であるが、浄瑠璃史においても、地方文化史においても、具体的な様相を明らかにすることにつながるという見通しを得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主に二つの資料「森藤十郎日記」「松平美濃守日誌」について、その内容を研究成果とともに公開することを目指して研究を進めてきた。しかし、所蔵機関や調査が必要な関係機関である鳥取県立図書館、鳥取県立博物館、柳沢文庫での調査がコロナ禍の影響で不可能な状況が続き、準備作業が不充分になり、本年度中には公開することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
所蔵機関や関係機関への調査が可能になれば、撮影や確認作業を完了させたいと考えている。もしコロナ禍の影響が長引き、実地調査が難しい状況が続いた場合には、すでに収集した紙焼きや仮撮影した画像をもとに翻刻作業を完了させ、内容についての研究成果をまとめることを優先する。 江戸や大坂における都市演劇文化が鳥取藩士や大和郡山藩主によってそれぞれの国元にどのように持ち込まれ、地方文化に具体的にどのような影響を与えたのかについて、研究を進め、成果を発表することを予定している。 状況を見ながら、資料全体の紹介が難しければ、研究成果のみを先行して公開することを目標として、計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
公開を計画していた資料の所蔵機関や関係機関への調査がコロナ禍の影響で不可能であったため、そのための研究費が使用できなかった。すでに収集した資料で研究を進めるため、パソコン機器などの充実をはかり、研究計画の修正を行ったが、時間的に難しく、研究成果の公開には至らなかった。次年度はコロナ禍の影響を考慮し、資料公開よりも研究成果の個別発表を優先することを計画し、必要な調査や確認作業を進めるために研究費を使用したいと考えている。
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