上海図書館別館である徐家ワイ蔵書楼所蔵の日本語図書のうち戦前期の〈外地〉で発行されたものを選び、さらに文学およびそれに隣接する領域のものについて、その書目を作成した。蔵書楼には戦前期の日本語図書が約10万冊ほど所蔵され、その中から選定された書目作成対象数は1263冊であった。各冊ごとに、著者・編者名、タイトル(サブタイトル含む)・発行所・発行年月日・総ページ数・値段・序文・跋文・目次などを記載した。1263冊のうち、日本の国会図書館に所蔵されているものは3割程度であり、この研究の書誌学的貢献度はかなり高いものと思われる。特に昭和18・19・20年度刊行の書籍については、戦時下末期の混乱および戦後の引き上げ時の書類携行禁止措置のために日本に持ち帰れないままになってしまったものが大部分といってもよい。この場合、いわゆる〈外地版〉と呼ばれる外地刊行本には、同じタイトル、同じ組版で日本と外地との両方で刊行されているものも多くあり、一般には日本でまず刊行され、その紙型を使って外地の印刷所で印刷し、発行所・印刷所などを中心に奥付の内容と表紙・裏表紙だけが異なる形式のものも相当数ある。日本と外地の両方で刊行されているものの場合、その作者は対外有力な作家であることが一般であり、日本で好評を得た作品だけに日本から輸送する代わりに手っ取り早く外地で印刷してしまうという判断である。作者が大作家である場合には、戦前の外地で刊行された事実はほとんど調査済みであるが、大衆文学作家などではその限りではない。
|