研究課題/領域番号 |
17K02489
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
岩田 美喜 立教大学, 文学部, 教授 (50361051)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イギリス・アイルランド演劇 / ジェンダー論 / 家族表象 |
研究実績の概要 |
本研究は、18世紀後半から現代に至るイギリス・アイルランドの演劇に登場する家族(特に兄弟姉妹)の姿を考察することで、演劇が描出する家族表象が同時代的な問題意識を取り込みつつ柔軟に変化して来た、そのダイナミズムを明らかにするものである。個人研究としては広範な時代に渡る研究であること、また演劇研究であることから、日本では入手しにくい文献や映像資料に当たる必要がある。そのため、課題の初年度に当たる2017年度は、夏季に英国へ2週間渡航し、ロンドン(英国図書館)およびストラトフォード・アポン・エイヴォン(ロイヤル・シェイクスピア・シアター)にて資料調査を行った。 これらの研究調査をもとに、2017年度中に研究代表者が行った口頭の成果発表は1本(うち1本は国際学会)、完成させた論文は1本である。また、これとは別に、2016年度より進めていた予備的研究を発展させ、2017年5月の日本英文学会でのシンポジウムというかたちで発表している。このシンポジウムでは、18世紀演劇に焦点を当て、王政復古時代の〈家族〉というコミュニティのあり方に反発をしていた無神論的放蕩主義者たちの世界観が、R. B. シェリダンのような18世紀の喜劇作家によるコメディでいかに換骨奪胎しているかを論じた。 一方、2017年度に入ってから本格的に研究を始めた領域では、20世紀前半の演劇(特に W. B. イェイツや T. S. エリオット)に注目し、彼らの実験演劇がいかに伝統的な家族およびジェンダー表象を受け継ぎながら同時に脱構築しているかということを、具体的な作品分析を通じて指摘した。また、韓国で行われた国際学会での発表では、映画版『マクベス』(2015)を取り上げ、21世紀の解釈として、いかにマクベスの野心が「子供に先立たれた夫婦の喪の仕事」に改変されているかを明らかにした
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究の進捗状況はおおむね順調に進展しており、当初の研究計画に大きな変更はない。当該年度に発表した論文および口頭発表は、最終年度に発表を予定している単著の下敷きとなる予定であり、最終的な実績への見通しが立っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、次年度は本研究課題の最終的な目標である単著の執筆を念頭に置きながらも、引き続き広範な資料調査を行うとともに、単発的な口頭発表および論文発表を積み上げていく予定である。 その際、今後は口頭発表のみならず論文の執筆においても国際的な研究成果を目指し、英語論文の執筆に重点を置くようにしたい。そのために夏季休暇を効果的に利用して、海外での資料調査を行うとともに、論文執筆のための時間を取る予定である。 また、研究領域としては、初年度においては、男性劇作家による作品ばかりを扱っていたので、ジェンダー研究としての深度を持たせるために、女性劇作家による作品への考察と分析も始めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国際学会発表に関する渡航費が予想よりも大幅に低く、また研究に関わる電子機器の購入を所属機関の変更などの理由で見送ったために、40万円近い次年度使用額が発生してしまった。 しかし、2018年度も引き続き海外での資料調査を計画していることや、前年度の購入を見送った電子機器類の購入を行う予定であることなどから、研究期間全体を通じて考えた場合、研究費の使用に大きな不具合は出ないものと考えている。
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