ジョン・ガワーの作品を研究するうえでは,これまで彼の主要作品とされる長篇の英詩『恋する者の告解』(Confessio Amantis) に研究者の関心が偏る傾向が見られたが,近年になって,英語以外の言語で書かれた詩作品に対しても急速に関心が高まりつつある。本研究は,trilingual poetとしてのガワーの詩作活動の全般を視野に収めたものであり,言語間,国家間,学問領域間の狭間に埋もれがちであったガワーの仏語作品の再評価を促すという意義を有した。と同時に,英仏比較文学研究の新たな可能性を示唆することにも貢献し得たと考えられる。
|