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2019 年度 実施状況報告書

『リア王』第一・四つ折り本のシステマチックな編集に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K02495
研究機関新潟大学

研究代表者

辻 照彦  新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (30197678)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードリア王 / 第一・四つ折り本 / 第一・二つ折り本 / テクスト間の異同
研究実績の概要

2019年度は『リア王』第一・四つ折り本に見られる編集・校訂の痕跡の一つとして、文法的標準化に焦点を当てて分析を継続した。それは、明らかに文法的に逸脱した表現を標準的な表現に書き換える行為である。本分析のきっかけとなったのは、『リア王』の重要なテクストである第一・四つ折り本(1608年)と第一・二つ折り本(1623年)のテクストを比較するとき、例えば『ハムレット』のケースと比べて、文法に関係する異同が極めて多いという発見である。そして、それらを総覧すると、従来、杜撰なテクストとされてきた第一・四つ折り本の方が第一・二つ折り本よりも文法的により標準的になっている場合が圧倒的に多いのである。本研究では、第一・四つ折り本の編集者が文法的標準化という校訂作業を行ったことを具体例を挙げながら明らかにした。
例えば、単数形の主語の場合、動詞や代名詞は単数形であるべきだが、しばしば複数形の動詞や代名詞が使用される数の不一致の問題、(2)論理的には間違いだが、否定を繰り返して強調しようとする二重否定の問題、(3)主格の関係代名詞は省略できないが、特に関係節の動詞の直前に先行詞がある場合にはしばしば省略される問題などである。これらのケースで『リア王』の場合、第一・四つ折り本では文法的に標準的になっていて、第一・二つ折り本では非標準的になっていることが多い。本研究では、いずれのケースもシェイクスピアのオリジナル原稿では第一・二つ折り本のように非標準的になっていた可能性が高いことを韻律の分析や他の作品に見られるシェイクスピアの文法的逸脱傾向を分析しながら裏付け、第一・四つ折り本に見られる一見標準的な用法は編集者の校訂作業の産物である可能性が高いことを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

『リア王』第一・四つ折り本の編集者について、台詞の矛盾点や不整合を訂正しようとする傾向に加え、文法の標準化を図ろうとする傾向を明らかにできたことで、『リア王』第一・四つ折り本のシステマチックな編集の全容解明にさらに一歩近づくことができた。

今後の研究の推進方策

2020年度は、前年度に得られた成果をもとにして、『リア王』第一・四つ折り本に見られる編集の痕跡の分析を続ける。第一・四つ折り本の編集者が見せた大胆なテクスト介入として、珍しい単語を一般的な言葉に書き換える同義語置換のケースを取り上げる。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じたのは、『リア王』のヴェアリオラム版の出版再延期をはじめ、購入を予定していた複数の新刊研究書の発行が延期されたことと、新型コロナウイルスの影響で購入予定だったPCやタブレットが欠品となったためである。正常化を待って速やかに購入する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 『リア王』第一・四つ折り本に見られる文法的標準化の痕跡に関する一考察2020

    • 著者名/発表者名
      辻照彦
    • 雑誌名

      新潟大学経済論集

      巻: 第108号 ページ: 117-130

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 『リア王』第一・四つ折り本に見られる文法的標準化について2020

    • 著者名/発表者名
      辻照彦
    • 学会等名
      第38回エリザベス朝研究会
  • [学会発表] シェイクスピアの読者が残した痕跡―Jean-Christophe Mayer 著 Shakespeare's Early Readers を読んで2019

    • 著者名/発表者名
      辻照彦
    • 学会等名
      第36回エリザベス朝研究会

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公開日: 2021-01-27  

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