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2019 年度 実施状況報告書

初期近代英国演劇におけるキルケ神話の表象に関する考察

研究課題

研究課題/領域番号 17K02499
研究機関京都大学

研究代表者

廣田 篤彦  京都大学, 文学研究科, 教授 (40292718)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード初期近代演劇 / 神話 / キルケ
研究実績の概要

本年度は以下の二点について研究を遂行した。
1.John FletcherならびにPhilip Massingerの劇作品におけるCirce像の探求
地中海を舞台とした初期近代劇作品におけるキルケ像の表象に焦点を当て、研究計画に沿ってFletcher, _The Knight of Malta_を分析した。この過程で、やはり地中海を舞台とした悲喜劇の一つである、Massinger, _The Renegado_が比較の対象となる可能性を見出し、この劇作品についての考察を開始している。_The Renegado_は次年度の主たる研究対象として予定しているFletcherの_The Island Princess_に対抗する形で、ライバル劇団によって上演されたともされており、この劇をFletcherの二作品と比較、対照しながら次年度の研究を進める準備ができたと考える。本年度の研究においては、初期近代におけるオスマン帝国の拡大に伴う地中海地域におけるキリスト教・イスラム教の接触という文脈において、キリスト教徒がイスラム教に改宗(変身)するという懸念が、キリスト教徒男性登場人物に対してイスラム教徒女性登場人物が示す魅力と絡み合いながら、どのように劇化されているかを中心に研究を進めた。
2.Henry Iden, Circeのオンライン・エディションの編集の継続
上記1と並行して、公開主体であるフランスPaul Valery大学ICRLの担当者と連絡を取りながら、本文の校閲並びに注釈の作成を進めている。目下、既に送付した本年度の作成分について、先方からのレスポンス、フィードバックを待っている状態である。このエディションについても次年度末には全体の準備を完了する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

新型コロナウィルス感染拡大の影響により、本務校を含め国内外の図書館での所蔵資料の調査や研究に関する打ち合わせに支障をきたしているため。

今後の研究の推進方策

本研究課題の最終年度になる次年度には以下の三方向から研究を推進する予定である。
1.初期近代演劇におけるキルケ像のヨーロッパの外への拡大と変容ー研究計画にある通り、次年度はJohn Fletcher, The Island Princess_に焦点を当て、この戯曲におけるキルケ像を、過去の研究で得られた成果との比較において分析する。特に、初期近代ヨーロッパのアジアなど他地域への進出に伴い、元来古典古代の地中海を舞台としたキルケ神話が世界的に拡大した形で書き直された様相についての考察を行う。同時に、研究代表者が過去の研究課題において探求したWilliam Shakespeareの関連作品群や、本年度の研究中に見出した_The Renegado_との比較を行うことで、他作家によるキルケ表象との比較検討を行う。
2.Henry Iden _Circe_オンライン版編集ー上記の通り、Paul Valery大学側の研究者との意見交換に基づく編集、校訂作業を継続的に進め、次年度中の完成を目指す。
3.研究のまとめ並びに今後の発展方向の探求ー研究最終年度となる次年度は研究全体のまとめを行う。特に、過去三年間の研究を通じてその可能性が認識されるようになった以下の方策に重点を置く。初期近代英国演劇以外の文学分野におけるキルケ(ならびに関連する)神話の書き直し、変容について、adaptation, appropriationといった理論的な枠組みも援用しながら、古典古代から現代にいたるまでの多くのテクストを総合的に分析し、繰り返される書き直しを通じた神話(再)形成の過程といった主題を視野に、本計画終了後の研究の発展方向を探求する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染拡大により、国内外における資料調査ならびに研究打ち合わせのための旅費が執行不可能になり、また、海外に発注した研究資料の納品に一部遅延が生じため。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 国際共同研究 (1件)

  • [国際共同研究] Paul Valery大学 ICRL(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      Paul Valery大学 ICRL

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公開日: 2021-01-27  

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