研究課題
基盤研究(C)
本研究は、イギリス・ロマン主義文学において援用される身体性に関わるレトリックが、18世紀から19世紀初頭にかけて確立されていく解剖学、脳科学といった医学的言説と密接に関連し、革新的な詩的言語として呈示されたことを明らかにした。特に、身体の部位が神経と脳によって、全体として「呼応」し、調和するという、近代的な身体像を基軸にした詩的レトリックが、いかに革新性を内包していたかを明らかにした。
英文学
従来のロマン主義文学研究は、精神的超越性や理想的美をロマン派的創造性の核として見なし、それによって人間性の肉体的、物質主義的側面を抑圧してきたことは否めない。しかし、本研究において、ロマン主義文学が、いかに医科学的言説と密接に関連し、「身体性」を鍵にした詩的レトリックによって、新たな人間性のヴィジョンを呈示したかについて明らかにした。こうした人間性のヴィジョンと言語の機能についての新しい見地が、学術的に果たした意義は大きい。