研究課題/領域番号 |
17K02503
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研究機関 | 名古屋学院大学 |
研究代表者 |
西村 美保 名古屋学院大学, 外国語学部, 教授 (60284452)
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研究分担者 |
濱 奈々恵 福岡大学, 公私立大学の部局等, 講師 (10711278)
松倉 真理子 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (90390145)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ジェンダー / 貧困 / 救貧院 / 飲酒 / 視覚表象 / 労働者階級 / ヴィクトリア朝文化 / ヴィクトリア朝文学 |
研究実績の概要 |
2021年度は代表者はヴィクトリア朝社会において「堕ちた女」とみなされた女性や救貧院に関する絵画など、視覚表象を吟味した。社会問題を扱うことで有名な『グラフィック』誌に掲載されたフーボルト・フォン・ヘルコマーの版画と、絵画"Eventide: A Scene in the Westminster Union"、それらの批評を吟味し、研究会で発表した。改めて絵画が社会問題を物語るのにいかに重要な役割を果たしたかを強く認識させられた。上記絵画は救貧院内での作業の様子や同じユニフォームの疲れた高齢女性たちの働く姿がモノトーンで描かれている。ヘルコマー自身ロンドンのソーホー地区にあった"the Saint James’ Workhouse"へ訪問したことがあり、その経験に基づいている。絵画の方は版画を多少脚色しているがわびしい雰囲気は共通している。身を寄せ合いほら穴のような場所に集められていて、社会的に軽視された存在であることが強調されている。一方で、零落した女性たちが置かれた家庭環境の小説における描写を吟味し、その結果、貧困だけでなく、家族の飲酒問題も浮かび上がった。それで改めて、その社会的背景、社会の飲酒に対する規制と個人の行動についても研究を進め、トマス・ハーディの小説における飲酒の表象と文化的コンテクストについて日本トマス・ハーディ協会で口頭発表した。分担者の一人は、オーストラリアへ行った売春婦に関する論文精読に従事し、またもう一人は収集した文献や挿絵、現地訪問時に得られた史料をもとに、新救貧法下での下層の人々の生活実態(「最悪の」仕事、居住地域、衛生、救貧院や貧民学校での処遇など)について整理したものの一部を、研究会において報告した。並行して、「堕ちた女」の社会的背景とその表象についての社会福祉史の立場からの考察に取り組んだ。
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