研究実績の概要 |
1. イギリスでのG.Greene作品研究およびNarrative Medicine調査 International Festival 2019への参加およびフィールドワークを通じて作家の作品を多角的に精査し、関連資料および本研究の発展につながる最新情報を収集した。テーマトークおよびオープン・ディスカッションでは、研究課題と関連するトピックとして<humanities>の問題に注目した。近年、医療従事者はMedical Humanitiesについて学習することが求められているが、実情、医療教育における「人間性教育」プログラムは発展途上にある。しかし、文学の中でもとりわけ彼の作品にはMedical Humanitiesのコアである<humane feelings> (sympathy, empathy, compassion, pity, concern and caring)が色濃く描出されていることから、学生は文学を読み解くことでこれらの感情や宗教の違いを認識し、臨床現場で様々な価値観の患者の気持ちに寄り添うことが可能になると期待される。このような点から、医療倫理教育における「文学と医療」の重要性を再確認した。 2. 作品のナラティヴ解析:初年次/医療倫理教育の実践を通じて 「医療と物語」「医療倫理とヒューマニズム」の講義で、Greene作品とナラティヴ・メディスン教育を実践:学生は作品内の病者の状況を分析、分類し、各々が抱える問題を抽出。先立って、学生は疾患、病い、病気の概念の違いとそれぞれの定義を学習し、それゆえ個人に応じた適切な対応やスピリチュアル・ケアが必要であることを理解した。 3. 作品における「癒し」の検証 対話にはどのようなヒーリング効果があるかを検証し、それをもとに人と人との深い心の交流、言葉の持つ力が病者の理解や病の治癒のプロセスに不可欠であることを論証した。
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