本研究はシェイクスピア劇の小唄および同時代の歌謡文化に関する情報のさまざまな空白を埋め、演劇上演において小唄が本来的に果たしていた役割を再確認した。先行研究の書誌学的成果がシェイクスピア劇に限られるため本研究も対象を限定したが、将来的にはエリザベス朝演劇全体を対象とする包括的な研究に発展しうる。本研究の成果で予想される直接的な意義は小唄の歌詞本来の意味を再現し新たな作品解釈を行うことができる点、さらにシェイクスピア劇テクストが関連する文化領域をエリザベス朝の大衆歌謡文化まで広げ、文学研究と文化史研究を具体的に接合する新たなアプローチ・モデルを提示できる点にある。
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