本研究はイングランドの枢密院顧問官フランシス・ウォルシンガムの文人に対する庇護が1580年代においてどのような実態であったのかを具体的に明らかにした。ウォルシンガムが枢密院において果たしていた主導的な役割を検証した上で、彼のクライアントである詩人や劇作家にどのような恩恵を与え(逆に拘束を課し)たか、また、その庇護によってどのような社会的ネットワークがクライアントの間に構築されたか、という問題を、これまで殆ど顧みられることのなかった一次史料に基づいて考察した。それによって枢密院という政治家の集合体と詩人たちとの相互扶助的関係の全体像をおぼろげながら浮かび上がらせることができた。
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