研究課題/領域番号 |
17K02524
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
板倉 厳一郎 関西大学, 文学部, 教授 (20340177)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 現代イギリス小説 / 世界的内戦の表象 / テロの表象 / トラウマの表象 |
研究実績の概要 |
論文"Screams and Laughter: Transfer of Affect in Nadeem Aslam's The Blind Man's Garden"を国際学術誌に投稿し、現在審査待ちである。これはナディーム・アズラムの『盲目の男の庭』における共感の問題を論じたものである。標題の「盲目の男」が共感を引き起こさず、彼に引き取られた孤児の青年に共感を引き起こすというこの作品の構造を解き明かした論考である。シアン・ガイの『醜い感情』(Ugly Feelings)のいくつかの章のように、アメリカ黒人文学を情動という観点から読み解く試みはあったものの、ポストコロニアル文学やイギリスの有色人種作家の作品をこのように読み解く試みはまだ少なく、そのような研究につなげていければと考えている。 前回の研究課題(課題番号: 26370342)で分担執筆した著作What Happened?: Re-Presenting Traumas, Uncovering Recoveriesがブリル社より出版された。3章"Re-imagining Atomic Bombing and 9/11: Kamila Shamsie's Burnt Shadows" (pp. 34-51)で、カーミラ・シャムシーの小説『焦げ付いた影』における主人公ヒロコの原爆体験によるトラウマが9.11の体験といかに接続されており、その体験が倫理的なテーマといかに結びついているかを論じた。後者の議論は、『現代イギリス小説の「今」』に収録された「記憶をなくす、つなぐ、でっちあげる」(pp. 229-269)におけるシャムシー論の礎となったものである。 この研究テーマとは直接関わらないものの、2018年12月8日に神戸女学院大学で開催された日本英文学会関西支部第13回大会のシンポジウム「いま、イシグロを読む」に登壇し、「イシグロと『若い世代の作家』」を発表した。カズオ・イシグロに関するシンポジウムという範囲内で、デイヴィッド・ミッチェル研究の成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
健康上の理由により、行動に制限が生じたため。2018年に体調を崩し、現在も通院中である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年5月に安田女子大学で開催される日本英文学会の特別シンポジウム「核の時代と文学研究」において講師として登壇し、「ポストアポカリプス小説と核の文化」を発表予定である。ここでデイヴィッド・ミッチェルの『クラウド・アトラス』を論じる予定であり、その成果を踏まえて新たなミッチェル論を執筆し、しかるべき学術誌等に投稿する予定である。 2019年7月にニュージーランドのオークランド大学で開催される国際学会ACLALS(イギリス連邦言語文学会)の大会に"A Post-ISIL Family Romance: Home and Nostalgia in Kamila Shamsie’s Home Fire"を発表予定で、審査済みである。だが、健康上の理由で参加できるかどうかはまだわかっていない。もし健康上の理由で発表ができなくても、ここで論じる予定のカーミラ・シャムシーの『ホーム・ファイアー』については論文を執筆し、しかるべき学術誌等に投稿したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会参加費・渡航費が高額になることを見越して計画を立てていた。健康上の理由でキャンセルしたために余剰分が生じたが、研究書籍購入等に使用する予定である。
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