研究課題/領域番号 |
17K02526
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
竹山 友子 関西学院大学, 文学部, 教授 (90462142)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 英詩 / 17世紀 / ジェンダー / 女性作家 / キャサリン・フィリップス / アフラ・ベーン / マーガレット・キャヴェンディッシュ |
研究実績の概要 |
本研究は、17世紀イングランドの女性作家キャサリン・フィリップスとアフラ・ベーンによるウェルギリウス、ホラティウス、オウィディウスなどの古典作品や、ジョン・ダン、エイブラハム・カウリー、ロチェスター伯爵、ロバート・ヘリックなどの同時代に読まれた作品を含むキャノン(権威的作品)の書き換え作業、特にジェンダーを意識した書き換え作業に焦点を当てる。平成29年度は研究実施計画に従って資料収集を中心に、キャサリン・フィリップスの決定版テクストとなるPoems By the most deservedly Admired Mrs. Katherine Philips The matchless Orinda (1667) およびアフラ・ベーンのPoems upon Several Occasions: With a Voyage to the Island of Love (1684) を入手し読み進めた。また、既にテクストを入手しているオウィディウス、ホラティウス、ダン、カウリーなどの作品については精読を行った。 今年度は収集したテクストおよび文献を読み進めながら研究を進めたが、フィリップス及びベーンに影響を与えたと考えられるカウリーを研究する上で、二人の作家の先駆けとなる17世初頭のエミリア・ラニヤー、ほぼ同時代の共和制時代から王政復古期にかけて活躍したマーガレット・キャヴェンディッシュの二人の女性作家との共通項が新たに見つかり、それに関する研究発表および共著出版も併せて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は収集したテクストおよび文献を読み進めつつ、学会発表および論文発表を行った。当年度に学会発表および出版したものはいずれも研究の主要テクストとなっているフィリップスとラニヤーの作品ではないが、研究していく上で新たに発見したキャヴェンディッシュとカウリーの比較研究を含めたものである。キャヴェンディッシュはフィリップスおよびベーンと同じ時代にまたがって活躍しており、さらに共通する男性作家の影響を受けているため、次年度以降の研究計画となっているフィリップスとベーンの関係を考察する上で二人を繋ぐ役割として重要と考える。 それに加えて、以前から進めてきたダンとフィリップスの影響関係を考察する研究を続けた。また、発表には至っていないがカウリーの著作とフィリップスの詩における共鳴関係、カウリーのラテン語作品とベーンの翻訳作品における比較考察についても研究を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は研究実施計画どおりに、フィリップスの研究とベーンの研究を同時に進めるが、前半はフィリップスの研究を優先させる予定である。平成29年度以前から進めているフィリップスの作品に見られるジョン・ダンの奇想の影響については今年度中に学会発表を行う予定であり、できれば論文発表まで完成させたい。さらに、カウリーとフィリップスの共鳴関係については昨年度から少しずつ進めているが、こちらは発表できる形まで研究を深めていきたい。前述の二つの研究は別のものではなく一連の研究であるため、平成30年度以降にひとつにまとめた形で発表および出版したいと考えている。さらに平成29年度に発表したカウリーとキャヴェンディッシュの研究については論文に仕上げて投稿する予定である。 平成30年度後半から31年度にはベーンとカウリーおよびロバート・ヘリックとの比較研究を中心に行う。カウリーのラテン語詩 Plantarum libri sex (The Six Books of Plants) の第5巻 The Treeをベーンが翻訳しているため、樹木の描写を中心にウェルギリウスやプリニウスとの比較も含めて考察する。また、ロチェスター伯爵やロバート・ヘリックなどとの比較も取り入れて、ベーンによる翻訳詩、翻案詩も含めた詩作品におけるジェンダーを意識した書き換え作業を考察する。 平成31年度後半にはフィリップスとベーンの女性作家の書き換え作業の共通項をまとめて、ベーンがフィリップスをモデルにした理由を考察して発表したい。
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