研究課題/領域番号 |
17K02527
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
秋元 孝文 甲南大学, 文学部, 教授 (70330404)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Etgar Keret / Israeli / Jewish / fiction / 温又柔 / 福永信 / 木村友祐 |
研究実績の概要 |
本研究課題の中心的作家であるイスラエルのユダヤ系作家エトガル・ケレット氏の、2019年秋、甲南大学への招聘に向けて、ケレットについての映画の上映と日本の作家三名を招いたシンポジウムを含む公開イベントを甲南大学で2018年11月17日に開催した。 前半では2017年にオランダのStephane Kaas監督が作成したEtgar Keretについてのドキュメンタリー映画 Etgar Keret: based on a True Storyを、研究代表者の翻訳した字幕つきで上映し、広く一般から参加してもらった聴衆からアンケートによって感想を得た。本アンケートの内容はEtgar Keretという作家ならびに彼の作品の、日本での受容を考察するに当たって貴重な資料となった。 第二部では「今、この世界で、物語を語ることの意味」をテーマに、Keret氏から送られたビデオメッセージを起点にしつつ、温叉柔、福永信、木村友祐の3名の日本作家による討論を行い、文学作品をつむぐことの現代的意味について聴衆とともに考える機会を持った。物語に対する距離感の3人の微妙な相違、問題意識を自らの社会的な立場に求める温、自分の存在のうつろさに求める木村、そういった「自分」から極力距離を置いて遊戯的な書き方にこだわる福永、という三者三様の姿勢が読み取れ、現代の文学における作家と物語の関係に関して示唆を得たばかりか、登壇した3人の作家からは前半部で上映した映画に関しても、同じ創作をする作家としての立場からコメントをもらい、エトガル・ケレットについての意見を交換することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画発案の時点では2018年秋にエトガル・ケレット氏を招聘する予定であったが、氏のテレビドラマ撮影スケジュールの変更によりそれが叶わなくなった。そのため2018年度末に計画を再構築し、2019年秋の招聘に延期となったが、そのキャンセルとなった2018年秋を無駄にすることなく、むしろ彼に関する映画の日本初上映と日本作家のシンポジウムを行うことによって、ケレット文学についてより考察を深める機会とし、2019年秋の招聘へとつなぐことができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2019年10月にケレット氏と妻で映画監督のシーラ・ゲフェン氏を甲南大学に招聘する予定であり、そこでいくつかの公開イベントや映画作品の上映を通して、ケレット作品について考察する機会を設ける。また、来日時に、氏のユダヤ系文学に関する見方、とりわけ研究代表者の関心であるアメリカのユダヤ系作家についての見方を聞き、議論する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画ではイスラエルでのエトガル・ケレット氏の訪問を計画し、費目として計上していたが、イスラエル外務省招聘の視察団に参加してケレット氏と会えたため、この費目の支出がなかった。2019年度にはケレット氏を日本へ招き、映画の上映や国内作家との対談などを企画しているため、それらの研究素材の作成等に使用の予定である。
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