研究課題/領域番号 |
17K02527
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
秋元 孝文 甲南大学, 文学部, 教授 (70330404)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アメリカ文学 / イスラエル文学 / ユダヤ文学 / エトガル・ケレット / ネイサン・イングランダー |
研究実績の概要 |
本研究課題の中心となるイスラエルの作家エトガル・ケレット氏の作品の日本への紹介を通して日本の読者・観客の反応を収集し、また勤務校へのエトガル・ケレット氏の招聘を通じて、ケレット氏と研究課題について直接話す機会を長時間設け、日本の作家との対談や取材、イベントを通じて彼の思想に触れる機会を得、その成果を文芸雑誌等に発表して、さらなるフィードバックを読者から得た。 具体的には、ケレット氏についてのドキュメンタリー映画"Etgar Keret:based on a True Story"、ケレット夫妻脚本、監督による"Jellyfish"、ケレット作品を原作としたアメリカ映画"Wristcutters"、ケレット夫妻脚本、監督の"Middleman"(前編、後編)の5作品を、字幕を付け、来日に合わせたタイミングで勤務校で上映する映画祭を開催し、ケレット氏にまつわる作品への日本の観客の反応をデータとして得た。 来日時には雑誌取材で日本の作家村田紗耶香さんとの対談、本学で開催されたイベントで西加奈子さんとの対談を行い、日本の作家との交流からケレット氏の考えを探り、後者はのちに本課題申請者の編成で、ケレット氏の重要エッセイ「ぼくはアンチ・イスラエルなのではなくて、アンビ・イスラエルだ」(拙訳)とともに『文藝』に掲載された。 来日の際には大学の講義にも登場していただき、そこで行ったインタビューでは、彼と翻訳のかかわり、ジョナサン・サフラン・フォアやネイサン・イングランダーといったアメリカの同時代ユダヤ系作家とのかかわりについて有益な話をたくさん聞くことができたのと、イスラエル=パレスチナ問題というケレットとイングランダーが共通して作品化している課題についても考察するきっかけを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究論文という形での成果こそないものの、研究課題の中心となる存在であるエトガル・ケレット氏を日本に招聘し、取材、イベント、講義、映画祭など様々な場面で彼の話を聞き、また作品への感想のフィードバックを聴衆から得られたことは、研究を進めるにあたって非常に有意義かつ濃密な活動となったため、今後の研究の深まりや広がりが大いに期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はケレット氏を起点としてアメリカの現代ユダヤ文学と共通する詩学を探るものだが、土台となるケレット氏との関係は順調に構築できたので、次はアメリカでイスラエル問題、ユダヤ人と信仰、同化の問題を描くネイサン・イングランダーの作品に着目し、とくにイスラエルとパレスチナの和平問題を背景としたDinner at the Center of the Worldについて考察していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ケレット氏招へい準備で多忙だったことにより、夏季に渡米できなかったため。
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