研究実績の概要 |
本研究は、グレアム・グリーンの中・後期の作品、及び同時期にメディアに発信した言説を「冷戦」という視点から検証・考察するものであるが、2021年度も新型コロナウィルスの感染拡大で、渡英できなかったために、国内で可能な研究活動を行った。前半はグリーンの中南米での活動や作品に焦点を当て、後半はこれまでの成果をまとめることに時間を費やした。具体的な内容としては、以下の4点である。 ①1970年前後のグリーンの中南米での動向に詳しい先行研究、Bernard Diederich, Seeds of Fiction(Peter Owen Publishers, 2012) を参考にしつつ、彼が取材したことをもとに書いた Daily Telegraph Magazine の記事などをまとめた。さらにグリーンの最新の研究書である Richard Greene, The Unquiet Englishman: A life of Graham Greene (Norton & Company, 2021) を読み、グリーンについての新たな情報や知識を得ることができた。 ②冷戦下の中南米の政治的状況や社会的状況について先行研究をもとに調べた。特に The Honorary Consul(1973)の背景となった南米の第二バチカン公会議以降の革新的宗教界の動き(「解放の神学」等)や流れを冷戦下の世界情勢の中で読み取った。 ③昨年度から精読をしている The Honorary Consul を中心に上記(①~②)で得た知見や考察をもとに論文「<闘う神父>の物語、グレアム・グリーン『名誉領事』を多角的に読む」を執筆し、日本キリスト教文学会発行の『キリスト教文学研究』第39号に投稿し、掲載が決まった。 ④本研究全体についてまとめた論文集を作成・刊行した。
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