研究課題/領域番号 |
17K02531
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
壬生 正博 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (30249784)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中世イギリス文学 / 異界 / 夢文学 / 旅行記 / アレゴリー / 聖書 |
研究実績の概要 |
平成29年8月6日から8月18日にかけてロンドンを拠点として、本研究課題のテーマである『タンダールの幻視物語』(The Vision of Tundale)と『マンデヴィル旅行記』(Mandeville's Travels)の中世写本および研究資料の調査・収集等を行った。概要は以下のとおりである- 1)British Library(ロンドン)では、Add. MS. 24189; Cotton Caligula AII; Royal MS. 17 B xliii等の写本調査を行った。また、これらの写本に関する解説書や研究書も閲覧し、研究に益する箇所は、館内で許可された範囲内でデジタルカメラを用いて撮影収集した。 2)National Gallery(ロンドン)のSainsbury Wingでは、地上の楽園、天の都、三位一体等の構図をもつ中世の視覚芸術を中心に調査し、館内で許可された範囲内でカメラを利用してデジタル資料等を入手できた。 3)Hereford Cathedral(ヘレフォード)では、13世紀後半に作成された世界地図(Mappa Munid)について調査を行った。また、貴重な研究資料も入手できた。 4)研究成果の中間発表として論文を作成し、学術雑誌に掲載された。左記論述は、『タンダールの幻視物語』と『マンデヴィル旅行記』の楽園に対する意識について論じたもので、考察の結果として明らかとなったのは、楽園に到達するには、両作品とも神の恩寵(grace)が必要不可欠であるという点を述べていることである。これは、神学者Thomas Aquinasにも共通している認識であり、この点から、神の恩寵は人間が楽園に到達するために極めて重要な宗教上の概念であることがわかった。今後は、この点を更に考究するつもりである。 以上が、平成29年度に行った研究実績の概要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究がおおむね順調に進んでいる理由は以下の諸事項による- ・英国図書館やヘレフォードへ赴いて写本や世界地図の実地調査ができ、多くのデジタル資料を入手できたこと。 ・国内の大学図書館や国立国会図書館等に赴き、多くの貴重な研究書を閲覧して当該研究に益する資料を収集できたこと。 ・本研究課題に関連する主な研究書を入手し、研究の進展を図ることができたこと。 ・本研究課題にの研究経過報告としての論文作成ができたこと、等が主な理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に入手できた多くの文献資料を今後の研究の進展に役立てる。来年度の中心となる研究内容は、The Vision of Tundale、Mandeville's Travels、Divine Comedy、Mappa Mundi等の楽園(パラダイス)に関する記述や描写を集めて楽園の要素を分類して対応表等を作成することである。これらの作業によって期待されるのは、それぞれの作品や地図における相違点である。種々の相違を見いだすことによって、それぞれの作者の楽園に対する意識の向け方を更に深めたい。また、研究の成果は学会等で発表するつもりである。
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