本研究は、中世西欧のパラダイスという異界に対する意識究明を目的とする。この観点から、14~15世紀頃の中英語翻訳作品「マンデヴィル旅行記」および「タンダールの幻視物語」、可視的な資料として13世紀後期のヘレフォード世界地図や写本図像を取り上げて複合的な研究を行った。特に上記二作品の比較でわかったことは、パラダイス描写と神の恩寵(grace)が密接に関連している点である。また、「マンデヴィル旅行記」とヘレフォード世界地図の比較によって、アジア全域が聖書の創世記に記されたエデンの園から流れ出る4つの川と深く関わっており、中世西欧とは全く異なる世界観を持っているとがわかった。
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