研究課題/領域番号 |
17K02540
|
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
大野 美砂 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (30337711)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ナサニエル・ホーソーン / トランスナショナル / トランスアトランティック / 『アフリカ巡航日誌』 |
研究実績の概要 |
京都産業大学の中西佳世子氏と共に続けてきた、ホーソーンの『アフリカ巡航日誌』翻訳出版については、各章の翻訳原稿の見直し、各章の注や解説の執筆などを進めた。当初の予定では、年度中に出版社に完成原稿を提出する予定だったが、予想していたより文章が難解で、19世紀当時の西アフリカに関する情報の収集にも時間がかかり、まだ出版の具体的な調整をする段階には至っていない。それで本研究の一年延長を申請し、認めていただいた。令和二年度にも翻訳書出版のための作業を続けたいと考えている。令和元年度の8月には、エコクリティシズム研究学会大会で企画された、Transatlantic Literary Ecologies: Nature and Culture in the Nineteenth-Century Anglophone Atlantic World (2016)に関するワークショップに参加し、ホーソーンの『緋文字』と『大理石の牧神』を論じる章を担当した。ワークショップでの発表やその後の議論から、トランスナショナルな視点を入れながら、ジェンダー、エコクリティシズムなどの最新の批評的方法を使ってホーソーンを分析する際の貴重なヒントを得ることができた。本ワークショップの成果は、『エコクリティシズム・レヴュー』第13号(令和2年8月に出版の予定)に掲載されることになっている。また10月には、トランスナショナルなエコクリティシズムの実践に関するスコット・スロヴィックの論考「経験主義、情報管理、環境人文学」の翻訳が『トランスアトランティック・エコロジー――ロマン主義を語り直す』に掲載され、出版された。その他、12月には、日本ナサニエル・ホーソーン協会東京支部会が企画した、Nathaniel Hawthorne in Context (2018)を論じる読書会で司会と発表を行い、発表とその後の議論の中で、ホーソーンに関する最新の研究についての情報を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『アフリカ巡航日誌』翻訳については、令和元年度には出版社と具体的な出版の調整を始める予定だったが、各章の翻訳の修正や史実の詳細の確認などに手間取っており、原稿が完成しておらず、出版の目途が立っていない。一方で、エコクリティシズム研究学会大会と日本ナサニエル・ホーソーン協会東京支部例会で、トランスナショナルな視点からのホーソーンの作品研究に関する発表をして、他の研究者から貴重な助言を得ることができた。また、トランスナショナルなエコクリティシズムの実践に関する論文の翻訳を出版することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度には、『アフリカ巡航日誌』の各章の翻訳原稿や注、解説を出版できる形で完成させ、出版のための具体的な調整に入りたいと思っている。また現在、トランスナショナルな視点を入れながら、ジェンダーや人種に関する表象に注目して、ホーソーンの『おじいさんの椅子の全歴史』を分析する論文を執筆する準備をしている。令和2年度中に論文を完成させ、論文投稿したいと考えている。令和2年度が本研究の最終年度になるため、4年間を振り返りながら、次の研究のテーマを考えていきたいと思う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究の成果の一つとして出版したいと考えていた『アフリカ巡航日誌』の翻訳だが、予想していたより準備に時間がかかり、まだ原稿が完成していない。そのため、本研究の期間を一年延長していただき、令和2年度に出版原稿を完成させることにした。令和元年度に残った47,207円は、令和2年度に出版準備のための書籍を購入する費用として使用したいと思っている。
|