本研究は、従来「笑い」と関連づけられることが少なかったW.B.イェイツが、「笑い」の演劇たる狂言に劇作の突破口を見出した点を解明し、また、日本的原理である「間」の詩学が英語圏モダニズムに果たした意義を、イェイツ、イェイツを能狂言に導いたエズラ・パウンド、パウンドを師と仰ぐヘミングウェイの作品に検証するものである。当初3年計画で、成果を順調に出し、2020年3月パリ開催の研究会で結果を発表し、一区切りする予定だったが、母の緊急手術による介護で1年延長を認められた。2020年度もコロナ禍で海外出張できず、学会も中止・延期が相次ぐ中、国内で研究を続け、コーク大学出版局出版の学術誌に論文が掲載された他、次年度出版の論文や学会発表を準備した(再延長)。 2021年度は本研究完成年としてイェイツの戯曲『猫と月』を中心に成果発表、またヘミングウェイについては詩を中心に成果を出した。また、本研究から発展した研究の方向も見出した。具体的には、論文4本(イェイツ関係の国際誌の特集号、ヘミングウェイ関係の研究書2冊、紀要)、本科研の最終結果として企画した『猫と月』に関する研究会に基づく冊子1冊、学会シンポジウムのproceedings1本の計6種を出版。またオンラインにより、学会・研究会・シンポが再開されたので、学会発表も上記私が企画した研究会を含め、4回(内、国際学会3回、その内1回は招待)行った。さらにアメリカ公共放送PBSによるヘミングウェイのドキュメンタリーに、インタビューを受けたものが放映された。 2022年度は本研究の成果としてオックスフォード大学とコーク大学の出版局から出る研究書のそれぞれに論文が掲載される。また、本研究の成果を評価され、国内外の学会4箇所から招聘され論文発表する。また国際学会のHPへのインタビューを依頼されている。このように本研究を発展した研究を続ける予定である。
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