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2020 年度 実施状況報告書

家と自己:ゴシックと犯罪小説研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K02546
研究機関奈良女子大学

研究代表者

中川 千帆  奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (70452026)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワード家 / 犯罪小説 / 女性専用住居ホテル / 都市 / デパートメントストア
研究実績の概要

2020年度は、キーとなる研究をInternational Crime Fiction Associationの学会で発表したあと、論文としてまとめることを予定していたが、学会が中止され、叶わなかった。したがって、家に関する研究、特にアメリカの19世紀からの家やインテリアに関する言説を広く読み、知識を蓄えることに専念した。これらの作業を進めるなかで、研究の全体像の見直しを行った。当初の研究の予定から多くの変更が加わり、イギリスの作家にも分析の対象を広げることになっている。予定していなかった作家や作品については、その都度、下調べをする必要が出たため、最終的な形にはなっていないものの、多くの論文の草稿を書き溜めることになった。
2020年度の成果としては、Hilda LawrenceのThe Death of a Dollを取り上げ、20世紀前半によく見られた都市における女性専用住居ホテルを舞台とした小説を分析した。Hilda Lawrenceはほぼ忘れ去られた作家であり、数作しか執筆していない作家ではあるが、そのすべての作品を入手するのはかなり難しい。その中でもThe Death of a Dollは比較的今でも知られている作品であるが、20世紀前半の特殊な状況を犯罪小説の舞台として取り上げているという点で、非常に興味深い作品である。この作品で描かれる、都市で働く独身女性たちに安価な住居を慈善目的で提供する女性専用住居ホテルは、成人した大人の女性たちを住人としながらも、「家庭的」で「家族的」な環境をつくりあげようとしている。女性を未熟な保護されるべき存在とする見方が都市の労働者である成人女性に適応されることのゆがみが、この犯罪小説の一つの重要なポイントである。またこの研究においては、女性の都市における居場所の問題としてデパートメントストアに関する考察も行い、「家」と都市というテーマの延長線上にあるものとして関連づけている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナ禍のため、学会が中止され、また必要な資料も入手できないことが続いた。よって、予定していない方向へとも研究を進めることになった一方、本来の研究が遅れている。

今後の研究の推進方策

2021年度は、International Crime Fiction Associationの学会が11月に開催予定であり、参加して発表することを期待しているが、中止される恐れも大きい。学会参加が叶うかどうかに拘わらず、Anna Katharine GreenとAgatha Christieの2人を取り上げ、犯罪小説とゴシックにおける家というテーマについて大きな流れを整理することを予定している。

次年度使用額が生じた理由

参加予定の国際学会が中止されたため。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] A Doll's House in the City: Women's Hotels, Department Stores, and Murder Mystery2020

    • 著者名/発表者名
      Chiho Nakagawa
    • 雑誌名

      欧米言語文化研究

      巻: 8 ページ: 1-19

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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