「家と自己」課題の意義は、ジャンル小説であることによって軽視されてきた犯罪小説の分野において、ジェンダーを始めとする政治的な側面に注目しつつ、哲学、心理学、地理学、建築学などを視野に入れながら、家の表象を分析し、近代以降、アメリカまたはイギリスにおいて家とその家に住む人がどのような関係にあるのかを分析したことにある。特に当時の建築史やインテリアに関するアドバイス本などを読み込むことによって、19世紀以降、近代化されていく都市、そして郊外や田舎において変化する環境のなかで、近代的自己の在り方を家との関係から明らかにし、それを犯罪小説の中にも見出せることを指摘したことが本研究の意義である。
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