2022年度は、チャイルド、ビーチャー、ストウら女性作家たちの家政学についての著書とその思想を論じた「家政学の誕生と家庭性神話の再考――チャイルド、ビーチャー、ストウ」が、倉橋洋子他編集『19世紀アメリカ作家たちとエコノミーーー国家・家庭・親密な圏域』(彩流社、2023年2月刊行)に所収された。また19世紀アメリカ古典文学のキャノンを確立したF・O・マシーセンの「アメリカン・ルネサンス」概念の源流とその20世紀後半から21世紀にかけての評価を再考した論文「使用されうる過去――20世紀のアメリカン・ルネサンス再考」が、中・四国アメリカ学会設立50周年記念論集『アメリカ研究の現在地――危機と再生』(彩流社、2023年2月刊行)に所収された。また2023年に設立40周年を迎える日本ナサニエル・ホーソーン協会が企画した記念論集『ロマンスの倫理と語り』(2023年5月刊行)にも編集件共著者の一人として参加している。その他最終年度の研究成果としては、エコクリティシズム研究学会第34回年次大会のシンポジウム「<その後>の世界と文学―ポストパンデミック、ポストディザスター、ポストアポカリプス」を企画立案し、司会するとともに、「ポストアポカリプスの今昔―ホーソーンからアトウッドへ」と題する発表も行った。コロナ禍で予定していたアメリカ人女性作家たちの旅の実態調査は全部が実施できなかった部分もあるが、研究機関全体を通して、ピュリツァー賞受賞者メーガン・マーシャル氏を招いて、越境する女性作家たちを取り上げた国際ワークショップを企画開催し、また各学会シンポジウムに登壇して、サラ・オーン・ジュエット、イーディス・ウォートン、マーガレット・フラー、キャロライン・カークランドなど広くアメリカ女性作家たちの旅行記について報告し、様々な共著や雑誌等で発表できたことは大きな成果だったと言える。
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