研究課題/領域番号 |
17K02548
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大地 真介 広島大学, 文学研究科, 准教授 (50330650)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | アメリカ文学 / ウィリアム・フォークナー / コーマック・マッカーシー / アメリカ南部 |
研究実績の概要 |
筆者は、本科学研究費助成により、アメリカ南部文学で双璧をなすウィリアム・フォークナーとコーマック・マッカーシーの研究をしているが、平成29年度は、まず6月に国際学会において英語で口頭発表をした。同発表を論文化したものが、12月に出版された学術雑誌 Humanities and Social Sciences Review(査読あり)に掲載された。これらの発表と論文によって、フォークナー文学の集大成とされる作品のテーマが人種・階級・ジェンダーの境界のゆらぎであることを明らかにした。 また、8月にも国際学会で英語の口頭発表を行った。本発表では、上述のフォークナーの人種・階級・ジェンダーの境界のゆらぎのテーマが、今日世界を代表するような映画にも影響を及ぼしていることを指摘した。 9月に筆者は、『フォークナーのヨクナパトーファ小説――人種・階級・ジェンダーの境界のゆらぎ』という単著の研究書を彩流社から出版した。現時点(平成30年5月)で拙著の書評はアメリカ学会(会員数約1150名)でしかなされていないが、その書評において拙著は絶賛されている。拙著では、フォークナーの代表作に共通するテーマが人種・階級・ジェンダーの境界のゆらぎであり、マッカーシーはそのテーマを単に引き継ぐだけでなく巧みに発展させていることを詳細に論じた。 平成30年3月には、『英語英文学研究』(査読あり)で英語論文を発表した。本論文では、フォークナーの代表的な短編小説のテーマも、やはり人種・階級・ジェンダーの境界のゆらぎであることを指摘した次第である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画調書や交付申請書で記したよりも、全体として一本多く論文を発表できた。平成30年3月に『英語英文学研究』に掲載された論文がそうである。 なお、フォークナーとマッカーシーを比較検証する筆者の論文が掲載される、藤平育子氏編集の『フォークナー文学の水脈』という花岡秀関西学院大学名誉教授のご退職記念論集が彩流社から平成29年度に出版されることになっていたが、平成30年度に出版ということになった。ただし、筆者の原稿は既に平成28年度に提出済みである。 また、マッカーシーの代表作Blood Meridian, or The Evening Redness in the Westとフォークナーの作品を比較する論文は仕上がり、それを基にして、平成30年8月に龍谷大学で開催される関西フォークナー研究会で講演をすることが決定している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度においては、まず、Go Down, Moses等のフォークナー作品とマッカーシーの中期の作品All the Pretty Horses、The Crossing、Cites of the Plain――すなわち国境三部作を比較検証する論文を執筆している。その論文と平成29年度に執筆したマッカーシーのBlood Meridianとフォークナー作品の比較論文に基づいて8月に龍谷大学で開催される関西フォークナー研究会で講演をし、それらの論文を国内外の主要な学術雑誌に投稿する予定である。 11月には、フォークナー作品の原稿等の資料を多数所蔵するテュレーン大学とテキサス大学オースティン校の図書館に資料収集に行く。そこで入手した資料を活用して、平成31年にはマッカーシーの前期の作品The Orchard KeeperおよびOuter Darkとフォークナー作品を比較検証する論文を執筆し、平成32年には、マッカーシーの前期作品の集大成といえるSuttreeとフォークナー作品の比較論文を執筆し、いずれの論文も国内外の主要な学会で口頭発表し、なおかつ主要な学術雑誌に投稿するつもりである。
|