• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

C. L. R. ジェームズの地理的移動と身体文化論との関連性およびその影響

研究課題

研究課題/領域番号 17K02550
研究機関愛知県立大学

研究代表者

梶原 克教  愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (90315862)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードカリブ文化 / 文化研究 / ポストコロニアリズム / 視覚文化 / 身体文化 / 英語圏文学 / 国際情報交換 / トリニダード・トバゴ
研究実績の概要

1. 研究実施計画に記したとおり、8月~9月にかけてロンドンのジョージ・パドモア研究所にて資料の収集をおこなった。これまで調査した西インド大学図書館で入手不可能であったニュー・ビーコン・ブックスから出版された書籍や、C. L. R. ジェームズも関わっていたレイス・トゥデイからの出版物(ジェームズによる講演録)などを入手することができた。それによって、ロンドン時代のジェームズによる論考を分析し、次年度以降に米国で入手予定の資料との比較考察をおこなう基盤ができた。
2. 研究実施計画書に記したとおり5月、6月、7月、8月と計4回にわたり、それぞれ異なるタイプの学会にてシンポジウム講師を務めたり、発表をおこなったりした。それぞれC. L. R. ジェームズによるクリケット論『境界を越えて』をキー・テクストとして、ジェームズによるクリケット論・身体文化論を俯瞰することを目的とした成果発表をおこない、以後の本研究課題において地理的移動との関係について個別的な考察を加えるための全体像を獲得することができた。
そこでの論点は大きく分けて以下の3つに分類される。
(1)トリニダード出身のクリケット選手によるトリニダードとイングランドでのプレイのジェームズによる描写は、文化人類学的な民族誌としての機能を果たしているという点。(2)ポストコロニアリズムの文脈では、トリニダードなどカリブ出身者の対宗主国(英国)との文化的関係(この場合はクリケットのプレイ)は奪用(re-appropriation)の一形態として解釈されることが多いが、ジェームズの解釈によると、それは時期と地域によって別様に捉える必要があるという点。(3)身体文化への着目は、自ずと言表可能なもの非言語コミュニケーションにおける可視的なものとの相違への考察が伴わざるを得ないという点。
以上が、本年度の研究で導かれた考察の結果である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成29年度研究実施計画に従って、資料収集と成果発表(およびそこに至るまでの文献分析)の双方において、おおむね順調に研究を進捗させることができた。
まず、ロンドンのジョージ・パドモア研究所での資料の収集については、研究所にある資料が予想外に整理されていなかったことから、新聞および書簡については予定したほどの収集成果は得られなかったが、「研究実績の概要」に記したように、これまで調査した西インド大学図書館で入手不可能であったニュー・ビーコン・ブックスから出版された書籍や、C. L. R. ジェームズも関わっていたレイス・トゥデイからの出版物(ジェームズによる講演録)などを入手することができたので、今後の分析材料の獲得としては順調な成果を得られたといえる。
また成果発表(およびそこに至るまでの文献分析)においても、4ヶ月で4回という集中的な負荷をかけると同時に、それぞれC. L. R. ジェームズによるクリケット論『境界を越えて』をキー・テクストとして、ジェームズによるクリケット論・身体文化論を俯瞰するという共通の目的を持っていたために、以後の本研究課題において地理的移動との関係について個別的な考察を加えるための全体像を獲得することができた。
以上の理由から、研究はおおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

C. L. R. ジェームズというトリニダード、英国、米国を転々と移動し続けた人物の思想を、その地理的移動における変遷から分析する本研究において、本年度はトリニダードと英国という関係から考察するために、ロンドンでの資料収集をおこなった。次年度以降は、研究実施計画にあるとおり、米国に残された資料の収集・分析をおこなう。特に、ニューヨーク・パブリック・ライブラリーのショーンバーグ・センターにある "C. L. R. James Letters 1939-1981)を中心に閲覧・複写をおこなう。同コレクションは、ジェームズの最初の妻であり政治活動を共にしたコンスタンス・ウェブとの間で交わされた書簡を中心とした資料で、本研究のテーマのひとつであるポピュラーカルチャーについて議論しているものなので、ジェームズの米国における議論を読み解く重要な手がかりになるであろう。
資料収集に続いては、前年度に英国で収集した資料との照応をおこないながら、ジェームズによる英国ポピュラーカルチャー(クリケット)へのアプローチと米国ポピュラーカルチャー(映画)へのアプローチとを比較検討する。

次年度使用額が生じた理由

執行残額が459円という少額であり、研究目的に適う執行が不可能だったため、次年度の物品費執行の一部に充てる予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 奪用を超えて―C. L. R. Jamesとクリケット2018

    • 著者名/発表者名
      梶原克教
    • 雑誌名

      黒人研究

      巻: 87 ページ: 22 - 27

  • [学会発表] 文化の解釈学としてのBeyond a Boundary2017

    • 著者名/発表者名
      梶原克教
    • 学会等名
      日本英文学会第89回大会シンポジウム「身体・人種・人間 ― 英語圏文学研究の人類学的転回」
  • [学会発表] 奪用を超えて ― C. L. R. Jamesとクリケット2017

    • 著者名/発表者名
      梶原克教
    • 学会等名
      黒人研究学会第63回年次大会シンポジウム「Caribbean Lives と国際性」
  • [学会発表] トリニダード、イングランド、クリケット ― Beyond a Boundaryに見られる政治とスポーツを巡って2017

    • 著者名/発表者名
      梶原克教
    • 学会等名
      MESA多民族研究学会第28回全国大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 文学/言語と映像の境界2017

    • 著者名/発表者名
      梶原克教
    • 学会等名
      テクスト研究学会第17回大会シンポジアム「アダプテーションの「境界」」

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi