研究課題/領域番号 |
17K02550
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
梶原 克教 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (90315862)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カリブ文化 / 文化研究 / 身体論 / 英語圏文学 / ポストコロニアリズム / トリニダード・トバゴ / 視聴覚文化 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、トリニダード、イギリス、アメリカの3地域でC. L. R. ジェームズが残した、身体に関する考察の変容と相関関係について分析することであり、研究計画に従い、すでに2018年度にはイギリスにおけるジェームズのクリケット論を中心に彼の身体文化へのアプローチを分析し、2019年度にはトリニダードにおける考察に関してひとつの結論を導きだし、それぞれ論文発表と学会発表をおこなった。 2020年度は、論文でアメリカにおけるジェームズの身体論を中心に分析し、ひとつの分析結果を発表した。同論文では、アメリカ時代のジェームズが、イギリス時代とは異なり、クリケットのようなスポーツを対象に身体を論じることがなくなった点を指摘し、イギリス時代と異なるジェームズによる身体論の傾向について、身体の人種化への抵抗とポピュラーカルチャーにおける身体性という2点から考察した。 2021年度は、その2点を受け、1920年代から40年代にかけての「ハーレムルネサンス」期におけるアメリカのポピュラーカルチャーにおける身体論の中にジェームズの考察を位置づける作業をおこなった。 ハーレムルネサンス期は、アフリカ系アメリカ人による文芸が花開いたいっぽうで、ニグロリーグの発足を始めとして、アフリカ系アメリカ人のスポーツが注目されていた時期でもある。しかし同時期の文人たちはスポーツに対して否定的であり、その理由は上記ジェームズによる身体の人種化への抵抗と同様だと見なすことができる。さらに、同時代の文人ジェームズ・ウェルドン・ジョンソンの野球に関する文献が、ジェームズ同様にポピュラーカルチャーという枠における身体性という点で視点を共有していることを立証し、6月に国内学会で発表したのち、共著書として論文を発表した。また、11月にはオンラインの国際学会で発表し、その議論を「情動論」の視点から発展的に論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、まずトリニダード、イギリス、アメリカ各地でのジェームズによる身体論を分析したうえで、最終的に3地点での身体論の総合的比較をおこない、最終的な結論を導き、分析結果の精査をおこなうために、2021年度は国際カリブ文学会(International Conference on Caribbean Literature)に出席し、その成果発表と意見交換をおこなう予定であった。 しかし、新型コロナウィルス感染症の影響で、予定されていた国際学会がオンライン開催となり、成果発表はできたが、通常は学会終了翌日におこなっていた研究協力者を含む学会参加者から複数の多方向からの視点による意見聴取の機会を得ることができず、研究計画書に記した分析結果精査の機会を失ったため、最終的な結論を出すことを見送らざるを得なかった。それゆえ、研究期間を1年間延長し、2022年度に研究結果の精査をおこなうこととなった。 いっぽう、国内が会での議論や1年間の研究期間延長を経て、「情動」という新たな問題系を補助線として設けることにより、本研究課題の「身体文化論」の部分において、より美学論的厚みを帯び精密さを増し、今後の研究に発展的につながる成果をあげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の国際学会で、研究協力者および学会参加者から複数の多方向からの視点による意見を聴取し研究成果を精査するために、あらかじめ昨年度までの研究成果を送付しておき、学会が再びオンライン開催となった場合は、学会とは別な場をもうけて意見聴取をおこない、意見を反映させたうえで研究成果を最終的な形で論文にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響で、予定されていた国際学会が中止となり、研究計画として設定していた研究協力者および学会参加者からの複数で多方向からの意見聴取による研究成果の分析結果精査の機会を失ったため、最終的な結論を出すことを見送らざるを得なかった。それゆえ、研究期間を1年間延長し、2021年度に国際学会もしくは同様の機会を利用して、研究結果の精査をおこなうこととしたため。
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