研究課題/領域番号 |
17K02551
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
佐久間 みかよ 和洋女子大学, 人文社会科学系, 教授 (00327181)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アメリカン・キャラクター / 海洋国家 / 島嶼 / コピーライト / 世界文学 |
研究実績の概要 |
本年度は、PAMLA学会において1865年以前のアメリカ文学のセッッションを司会し、海洋的な広がりといういう観点で多くの知見を得ることができた。パネリストは、water, ocean, mobilityなどをテーマにした発表を行った。第1発表者のメーガン・バーンズ氏はジェイムズ・フェニモア・クーパーの『モヒカン族の最後』においてこれまで見逃されていたハドソン川とカリブ海地域との関連を述べた。第2発表者の貞廣真紀氏は、アメリカを島と捉え、イギリスに代わる海洋国家として再定義する。アメリカの海洋力を整理し、南北戦争を国際戦争と捉え直す時、南北の対立は英米の対立ともずらすことができるとする。第3発表者のポール・ライアン氏は、19世紀初頭の太平洋の島々の人々による記録、記述を見ることで、グローバリゼイションの原型を見ようとする。非白人たちによるインターナショナルな場が作られ、それらは同質化へと向かうことを示した。3氏の発表は19世紀中頃から変化するアメリカを海洋を含む移動に注目して捉え、刺激を受けるものであった。アメリカを海洋に囲まれた国家と再認識するとき、世界との関係を再考する新たな知見が得られた。 アメリカと世界の関係は、国際版権法と作家の権利という形でも考察できる。コピーライトの問題が19世紀作家にどのような影響をあたえることになったか、エマソン、ソロー、メルヴィル、ホーソーンを中心に研究し、初期アメリカ学会で発表をした。版権問題から19世紀作家のもつ脆弱な立場が明らかになり、それゆえに国民文学というイデオロギーに抗しつつ、世界文学と対峙できるようなキャラクターを模索していく過程を検証し、ソローとエマソンに関して論文としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アメリカン・キャラクターの伝播について、海洋国家という視点、またコピーライトという二つの視点を得ることができた。コピーライトに関する考察は、ソローの英文論集に論文としてまとめることができた。しかし一方で3月に海外での資料調査に行けなかったため、海洋という視点での考察が進められず、メルヴィルに関する論考を整理して論文としてまとめることができなかった。次年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得た様々な知見を整理し、今後は世界文学の定義を検証することで、アメリカ国民文学の成立を見直すこととしたい。そのため、ハーマン・メルヴィルとラフカディオ・ハーンに焦点をあて、アメリカン・キャラクターについて考察していく予定である。これまでの国民文学のなかでの考察から、世界文学という枠組みへと見直し、「アメリカン・キャラクター」のもつ意味を検証していく。このため2018年11月にPAMLA学会で、ハーンについての発表をすることを目指し、 PAMLA学会でのテーマであるTheatricalityの観点での考察を範疇に入れて研究をしていく予定である。また、所属するアメリカ初期学会においては2018年6月にUCLA教授のマイケル・コラカチオ氏をワークショップに招いて、講演を依頼している。コラカチオ氏ともアメリカン・キャラクターについて意見交換を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は3月に計画していた海外での調査研究が行えなかったため、海外出張費の使用がなかったためである。しかし、一方で在外研究時の指導教授であったUCLA教授のマイケル・コラカチオ氏が2018年6月に来日することになり、研究会を開けることになった。このため2017度度の海外調査研究に予定していた金額は、研究会招聘に関わる費用にあてたい。ピューリタニズムから19世紀文学に詳しいコラカチオ教授とアメリカン・キャラクターについての意見交換を行いたいと考えている。これらをもとにメルヴィルについての英語論文をまとめる予定であり、その英文校正費用にも充てていきたい。
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