研究課題/領域番号 |
17K02551
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研究機関 | 学習院女子大学 |
研究代表者 |
佐久間 みかよ 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (00327181)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アメリカン・キャタクラー / メルヴィル / エマソン / 南北戦争 / メキシコ戦争 |
研究実績の概要 |
本年は、アメリカン・キャラクターに関し、マニフェスト・デスティニーとの関連において考察した。19世紀後半のアメリカの方向性を示す言葉として人口に膾炙したこの言葉は、アメリカが孤立主義から拡大主義に転換をすることを象徴的に示す言葉である。アメリカが西へと進むことは、やがてメキシコ、太平洋上への覇権を意味しており、従来のアメリカの地理的広がりのみならず、精神的影響が大きいものであったと言える。この言葉の影響を当時のアメリカの作家たちはどのように捉えか、そしてそれがアメリカン・キャラクターにどのように影響したかについて、エマソン、メルヴィルを中心に考察した。 エマソンの場合は、後にエマソンを読んだニーチェへの影響から逆行してその特徴について考察した。その結果、エマソンのもつ如何に生きるかというテーマが、ヨーロッパ的生きるとは何かという哲学的問いとは対照的な人生観に基づくキャラクター像を提示した可能性について研究し、これを論文「アメリカ大衆の言語革命への反抗ーニーチェからみたエマソン」(下河辺美知子編『マニフェスト・デスティニーの時空間ー環大陸的視座から見るアメリカの変容』)に まとめた。 メルヴィルの場合は、やがて国家の分断にすすむ時期に詩作に転じ、従来にないテーマを取り扱うことと、この転換点の時期が関連するものであることを確認することができた。 孤立主義が変容していく過程において、アメリカとヨーロッパ、アジアとの関係からみるアメリカン・キャラクターの変容について展開していく視座が開けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年は、コロナウィルス感染症拡大予防のため、海外出張ができなくなり、資料収集に大きな遅れがでた。また海外の学会での発表を考えていたが、中止またはオンラインとなるなど情報収集の機会の消失など大きな影響を受けた。資料関係では、デジタル資料を使ってできるものを積極的に利用したが、海外の図書館で使用可能なオンラインのデータベースは現地に行けないため使用できず、利用できるまで利用可能な代替データベース、書籍などに頼ることになった。海外の図書館などへの現地での利用ができるようになるまで調査を延期することとした。具体的には、メルヴィルの詩作について新たに調査を開始し, データベースAmerican Periodicalsを使う調査は延期することとしたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も海外出張による資料収集は困難な場合は、極力デジタル資料、書籍を活用することで代替し、アプローチを変更しながら対処していきたい。雑誌資料に関するデータベースの利用ができない間は、出版されているメルヴィルの未発表の詩を研究していきたい。また海外の学会などオンラインのものは積極的に活用していきたい。メルヴィルの未発表の詩作は近年ノースウェスタン版の全集にも含まれ、比較研究がしやすい状況になっている。海外出張ができるようになるまでは、この分野の研究を進め、新たな視点によって、本課題の研究を発展させるものとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年研究の中心として予定していた海外出張が新型コロナウイルス感染症拡大防止のため取りやめとなった。そのため旅費の支出がゼロとなったためである。新型コロナウイルスの感染状況は見通せないものの、海外出張が可能となれば、来年度はその期間を伸ばす、また出張可能な場所の変更なども視野に入れ、今年度できなかった資料収集を行うための支出として来年度使用したい。
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