アメリカン・キャラクターについて、トランスナショナルな視点に重点をおき、コロナ禍でできなかった海外での資料調査を行った。時系列を遡り、ピューリタンがアメリカに行く以前に渡航したオランダ・ライデンにおいて資料収集した。アメリカという意識を形成する際に何が重要になるか、トランスアトランティックな経験、植民地における土地獲得の経験から考察することができた。これまでアメリカン・ルネサンス期の作家メルヴィルらのキャラクター分析において疑問となった潜在的な問題は何かを解くためには歴史的な考察が必要と思われたからである。この成果を初期アメリカ学会例会で発表し、編集代表となり出版した『改革が作ったアメリカーー初期アメリカ研究の展開』において論文として発表した。 植民地時代のサミュエル・シューワルに焦点をあてることで、アメリカに対する地理的意識と宗教の結びつきの強さが明らかになった。シューワルらの世代は、先住民との抗争が日常的な意識にある一方、先住民へのキリスト教宣教の必要性を強く意識していたことが伺える。そこから理解すべきは、アメリカという新大陸での土地とキリスト教の結びつきである。この視点からアメリカン・キャラターについて再検証する必要性が浮かび上がった。 後にアメリカン・キャラクターとして成り立つ国民性を理解するには、アメリカという地理的広がりをどのように結束させるか、その際キリスト教が土地の拡大においてどのような位置を持つか、こららの要素を考察することがアメリカン・キャラクターが内包する分断と統合を理解するため必要であることが研究から明らかになってきた。アメリカン・キャラクターが持つ孤立主義的要素の元となるピューリタン的思考は、宗教と土地が強く結びついたものであることが検証され、ヨーロッパ型とは違うコロニアリズムが作用していることも加味すべきことが明らかになったと言える。
|