研究課題/領域番号 |
17K02552
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研究機関 | 江戸川大学 |
研究代表者 |
海老澤 邦江 江戸川大学, メディアコミュニケーション学部, 教授 (90413046)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 異文化交流と文芸活動 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、研究開始の初年度であるが、当科研費申請を行う以前から研究の一環ととらえ携わっていた活動が2点ある。両活動ともに、日本とアイルランド外交関係樹立60周年を記念する国際交流事業としての重要な意味を持ち、学術関係ならびに外交関係に関わる両国の関係諸機関から支援を受けたものである。 まず1つは、ダブリン市立図書館への図書寄贈である。日本のアイルランド研究者が著した研究書や翻訳書など、国交樹立以来、多くの学術的蓄積がこれまでまとめられないまま、日本の図書館や書店、あるいは個人の蔵書として存在する。主だったものを日本全国のアイルランド関係の学会に呼びかけ、文献収集を行い、外交関係を通じて無事にダブリンの図書館に寄贈。これによって、日本におけるアイルランド研究の概要が周知でき、学術交流の層の厚さと活発な研究活動を成果を知らしめ、両国の交流の歴史・今後の学術上の交流の進展に寄与した。 もう1つは、実行委員会副委員長としてW.B.イェイツの戯曲『猫と月』を日本の狂言師によるアイルランド公演の実現に向けて活動を行った。その実現に際しては、国際交流基金、万博基金、放送文化基金など重要な外的資金の獲得をし、企図の重要性を示すことができた。 学術研究を開始にあたり、研究テーマに関係する邦文文献の収集を行った。文献収集状況は、いまだ十分とは言えないが、入手した文献から読解を開始している。初年度の研究対象として、グレゴリ夫人の夫であるウィリアムを含めていたが、当人に関する研究書などの文献が乏しいので、ヴィクトリア朝社会ならびに植民地時代の社会背景の考察を行っている。また、特にアイルランドの場合は、イギリスの植民地政策が強化されている時代なので、アイルランドの精神文化の拠り所としての文芸復興運動の萌芽を促す土壌・社会背景を中心に検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度の秋に生じた健康上の問題から、長期の病気療養が必要となった。そのために、当初予定していた研究活動の予定を大幅に変更を加えねばならなっかった。また、実際に実行が不可能となったもの、研究のための出張や論文執筆などを完遂することができなかった。しかし、現在、健康を回復しつつあり、徐々に計画に沿った研究活動の再開を開始、順調な研究計画の復帰に努めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画にあるように、基本的文献の蒐集と周辺研究の文献精読を再開する。さらに、昨年度遂行できなかった研究成果を活字化し論文として発表する。また、今年度に京都で開催される予定の国際大会に参加し、研究に関わる情報等の収集に努める予定。 具体的には、グレゴリ夫人の戯曲の読解を進める一方で、夫ウィリアムの死後、グレゴリ夫人が自らの意思によって文芸活動を開始する。それに至る動機や人的影響関係、また、女性の社会活動に厳しい制限のあった社会において、その桎梏から解放されようとする当時の社会風潮や思潮も検討する。こうした社会的バックグランドが「サロン」形成に影響を与えていると思われるので、独立の機運が高まるアイルランドの激動する社会にあって、国民文学を形成するほどの文学理念を構築しえた理由や要素を明らかにしたい。また、そうしたサロン形成が英国のサロンとは異なった点についても検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始直前に、予兆なく突然の疾病によって長期の入院加療が必要となった。その後、健康を徐々に回復し、2017年10月から正式な職場復帰が可能となった。本来ならば、基本文献の入手、夏季の長期休暇中には海外でのリサーチ・学会参加を計画していたが、実際には4月から10月までの期間、実質的な研究活動が不可能であった。特に学会出張や論文執筆については、遂行の強い意志があったにもかかわらず、体力の十分な回復、ならびに十分な文献研究リサーチが、その当時不十分であるという判断から断念せざるをえなかった。しかし、徐々に健康は回復しており、申請した研究計画の遅れを取り戻すよう努めている。 昨年度使用できなかった文献購入の経費は、今年度分と合わせて研究用文献購入を検討している。今年度は、邦文よりも高額な欧文文献購入を中心に書籍の収集を行う予定である。また、研究旅費についても、日本で行われる国際大会出席を含め、有意義な情報交換、ならびに最新の情報収集に努め、研究課題の限定された分野だけでなく、その周辺・関係する複数の学会の内容を検討し、課題研究に資するものについてのは、日本の国内外を問わず、学会出張の計画・検討を行う予定である。
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