2022年度は論文では「1922年秋、ケインズは『荒地』を朗読した」を『四月はいちばん残酷な月――T.S.エリオット『荒地』100周年記念論集』(水声社)に、「植民地と故郷――清岡卓行、三木卓、後藤明生(後半2)」を『青山経営論集』第57号別冊に、「『そこに宿る ジプシーの魂が』――ポーラ・ミーハンと出会う』」を『現代詩手帖』(2023年2月号)に発表した。つぎに口頭発表であるが、日本T.S.エリオット協会第34回年次大会(於佛教大学)にて、シンポジウム「彼岸と此岸をつなぐもの――『荒地』100周年目のテクスト・コンテクスト」で「『荒地』と写真」を、日本アイルランド協会第29回年次大会のシンポジウム「アイルランドと殉教」で「北アイルランドと殉教」を発表した。 2017年から開始された5年間(実質は6年間)の研究期間、一貫して、テーマである北アイルランドの現状(ポスト紛争、ブレグジット)について、現地調査を踏まえながら、とくに街頭のミューラルや詩作品を分析することで行ってきた。 この間、論文11本を書き、口頭発表を11回行い、単著1冊を出した。そのなかでも2021年に出した『北アイルランドを目撃する』(水声社)は科研テーマに即し、かつ、長年の現地調査を踏まえた大きな成果と言える。こうした成果のすべてが2022年から開始された新たな科研課題「ポスト紛争とポスト・ブレグジットの時代における北アイルランドの想像力の展開」の土台となった。 最後に、これは悔いても仕方ないことではあるが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で現地調査が思うようにできなかった。幸い、2022年度以降新たな研究課題に取り組むことができ、また、2022年度は現地調査もできた。今後とも現地調査を重ねながら研究を続けていきたい。
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