コロナ禍の影響で国内外の出張がなくなり、さまざまな学会の例会と全国大会がオンライン開催になる中、2021年度はウィリアム・フォークナーとナサニエル・ホーソーンの作品比較を試み、研究発表と論文執筆を行った。2021年8月の日本ナサニエル・ホーソーン協会関西支部例会(オンライン開催)で「ホーソーンとフォークナーの人種意識――『七破風の屋敷』と『土にまみれた旗』を中心に」と題する口頭発表を行ったが、このうちホーソーンに関する考察が研究論文「『七破風の屋敷』におけるジム・クロウとホーソーンの人種意識」として日本ナサニエル・ホーソーン協会の機関誌『フォーラム』に掲載された(2022年)。これまでの研究では20世紀のアメリカ南部を中心に考察してきたが、今回のホーソーン作品の考察を通して19世紀のアメリカ北部の人種問題に取り組むことができ、研究に広がりが出てきたのは大きな収穫であった。フォークナーの発表部分は、2022年11月頃に発刊予定の関西学院大学商学部の紀要『商学論究(商学部開設70周年、商科開設110周年記念号)』に掲載される予定である(現在執筆中)。このところ取り組んでいる研究テーマは人種・民族問題だが、地域的にはフォークナーが駆け出しの頃に滞在していたフランス(特にパリ)にも注目している。こうした考察と同時に、一年間を通じてフォークナーとアメリカ文学・文化関連の文献資料を収集・精査した。これらの継続的な研究活動は、上記の具体的な研究成果に大なり小なり寄与している。
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