研究課題/領域番号 |
17K02566
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
戸田 由紀子 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (40367636)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ザルカ・ナワズ / 笑いの手法 / パロディ / ムスリム / カナダ文学 / シットコム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、21 世紀転換期以降のカナダマイノリティ文学における「笑い」の手法とそのポリティクスを明らかにすることである。カナダ文学において従 来「笑い」が白人の領域とされてきたことは、カナダの最も面白い文学作品に与えられる文学賞 Stephen Leacock Memorial Medal for Humour の受賞作家がほ ぼ全員白人作家であることを鑑みると明らかである。しかしビジブル・マイノリティおよびファースト・ネーションズの文学において、「笑い」の手法が用いら れてこなかったわけではない。先住民作家 Hayden Taylorも、「笑い」は先住民文化および文学の重要な要素である(Hayden 2005)と指摘している。また、文化 的に重要であるだけではなく、マイノリティ文学において、「笑い」は、レイシズムに対する効果的な抵抗の手段として戦略的に用いられてきた。それは白人主 流文学には見られない戦略である。当該年度は、カナダのムスリム作家Zarqa Nawazの自伝的小説(Laughing All the Way to the Mosque)、テレビシットコムシリーズ(Little Mosque on the Prairie)、ショートフィルム( BBQ Muslims, Death Threat, Random Check, Fred’s Burqa)における笑いの手法の考察を進め、その成果を"The Politics of Humour and the Comical: Zarqa Nawaz’s Little Mosque on the Prairie and Laughing All the Way to the Mosque" と題した論考として学会誌『カナダ文学』に掲載した。これまで多様なマイノリティ文学作品を個別に考察してきたが、今後は21世紀転換期以降のマイノリティ文学における笑いの手法とその政治的戦略にどのような傾向が見られるのかを包括的に考察し、まとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は研究成果を"The Politics of Humour and the Comical: Zarqa Nawaz’s Little Mosque on the Prairie and Laughing All the Way to the Mosque" と題した論考として学会誌『カナダ文学研究』に掲載することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで個別に作品考察を行ってきたが、22年度は、21世紀転換期以降のマイノリティ文学における笑いの手法とその政治的戦略にどのような傾向が見られるのかを包括的に考察し、まとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍にあり、国際学会での発表および海外調査や打ち合わせを行うことができなかったため。
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