研究課題/領域番号 |
17K02567
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
中西 佳世子 京都産業大学, 文化学部, 准教授 (10524514)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ホーソーン / 海軍言説 / 文学的想像力 / ペリー / アンテベラム |
研究実績の概要 |
今年度は『ホーソーンのプロヴィデンスー芸術思想と長編創作の技法』(単著 開文社出版 2017年12月刊行)の出版と『海洋国家アメリカの文学的想像力ー海軍言説とアンテベラムの作家たち』の出版準備を行った。 前者はホーソーンの創作において、プロヴィデンスの概念が彼の芸術思想の根底をなしており、作品のテーマと手法に深くかかわっていることを総括的にまとめた単著である。英文博士論文におけるテーマと構成を厳密に踏襲しているが、今回の和文における刊行に際しては大幅な改訂と加筆を行った。特に書き下ろしの第5章は政治とプロヴィデンスの概念との関係性を論じるものであり、海軍とホーソーンとの関係を考える上からも本科研費でのテーマと直接かかわる内容である。 共編者として取り組んでいる後者は本科研費による研究成果報告の一部となるものである。編集作業では、ホーソーン以外の作家と海軍言説との関わりについて、他の執筆者の研究内容を深く知ることができ、本研究のさらなる展開の方向性を見出す機会となった。 また海外調査では、日本遠征時にペリー艦隊が駐留した香港を訪問し、二度目の江戸湾来航前にペリーが艦上劇を行った香港の1850年代の様子を知ることができた。新たな資料発掘には至らなかったが、香港歴史博物館、香港海事博物館の資料を閲覧し、艦上劇が行われた実際の場所を訪れることで、アヘン戦争直後の香港事情を知ることができた。香港に停泊する列強の軍艦や商船がひしめく中、ペリーはアジア進出の後進国アメリカ海軍の艦上で欧米人観客を招く劇公演を行ったわけだが、そうした状況での艦上劇の効果という視点から本研究のテーマについての考察を深める契機となった。『海洋国家アメリカの文学的想像力』に収録する論考「ホーソーンとペリーが共有した海軍言説-現実とイマジネーションの接点」には今回の香港調査で得た知見を取り入れた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績の中間発表としての出版について単著、論集の編著とも予定以上に進めることができた。一方、出版作業で多忙を極めたため、予定していた、19世紀海洋国家アメリカの海軍言説の調査に重要なハワイや上海への出張はできなかったが、次年度に行う予定であり、概ね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度はナサニエル・ホーソーンが領事として駐在していたイギリスのリバプールを訪問し、ペリーとホーソーンとのリバプールにおける会見の背景についての調査を行いたい。また19世紀に海軍、捕鯨の拠点として重要な役割を果たし、メルヴィルなどの作家や小笠原に移住したナサニエル・セボレーなどが滞在したハワイの海軍基地での調査も行う。また、ホーソーンが編纂したペリーのアフリカ艦隊記録であるブリッジの『アフリカ巡行日誌』の翻訳を引き続き行う。
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