本研究はアメリカの現代作家ジョン・アップダイクの作品における「老い」の表象を分析することにより、現代社会における「老い」への対処の仕方を考察したものである。前半は女性の老いについて、後半は最晩年の老いについて研究した。主人公たちは自分の遺伝子が子孫に受け継がれ自分が生命のリンクとして自然の営みに関わっているという認識を持つことで自分の存在意義を確立し老いの苦境を克服、死の恐怖を緩和することができた。「老い」に関して特に男女の性差は見られず、最晩年の作品からは、神の創造物であるこの世のすべてを受容するという世界観に従い、生も死も良きものとして受け容れた作家の姿がうかがえる。
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