研究課題/領域番号 |
17K02571
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研究機関 | 芦屋大学 |
研究代表者 |
種子田 香 芦屋大学, 臨床教育学部, 講師 (10760035)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アメリカ南部 / ジェンダー規範 / 南北戦争 / 人種 / 近代化 / 階級 / 遺伝 |
研究実績の概要 |
2018年度はアトランタでマーガレット・ミッチェル記念館とマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの資料館を訪ねた。アトランタは公民権運動の中心的な役割を果たした都市であり、人種・階級・ジェンダー間の対立が激しかったことが歴史的資料から明らかである。 ミッチェルはエレン・グラスゴーの作品を参考にして『風と共に去りぬ』を執筆しており、小説の舞台設定も『不毛の大地』から影響を受けている。グラスゴーが南北戦争の歴史を小説で用いたのと同様に、ミッチェルも南部の史実から小説創作のヒントを得ていた。両作家とも、登場人物はフィクションであるが、歴史に沿うように工夫していた。 しかしながら、グラスゴーは南部の裕福な旧家の出身であることに負い目を感じており、南部の近代化の必要性を認め、社会主義に接近していった心情が小説から読み取れる。その一方、ミッチェルはそのような南部の特権階級が滅びゆく運命にあることを理解しながらも、資本主義経済の中で生き残る女性を描いており、グラスゴーのような罪の意識に苛まれることはなかった。同じように南部女性の自立を小説に描いているが、作家の生家と、階級に対する作家間の考え方の違いが、それぞれの作品に現れていることが興味深く理解できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アメリカまで現地調査に行く期間を捻出することができ、アトランタの人種的な対立構造は文学を生み出す地盤になっていたことを確認することができた。また、今年度の研究のまとめとして、芦屋市の市民講座でアトランタの歴史や小説を紹介し、研究内容を市民の方々に発信することができた。
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今後の研究の推進方策 |
限られた時間内ではあるが、引き続き、必要な資料を収集する。グラスゴーの書簡に関する資料のみならず、グラスゴーが読んでいた書物とその内容も確認して、小説への影響を考察する。 また来年度は最終年であるため、それらの集めた資料を整理・分析して、論文の執筆をし、学会誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2月に現地調査に赴いたため、飛行機代金が予定よりも安く済んだ。 また、校務が多忙で学会に参加できなかったため、研究発表や論文の印刷費用などを計画していたほどには計上することができなかった。
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