研究課題/領域番号 |
17K02579
|
研究機関 | 西九州大学 |
研究代表者 |
渡邉 真理子 西九州大学, 健康福祉学部, 准教授 (70389394)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | アメリカ文学 / 戦争 / 核文学 |
研究実績の概要 |
30年度は前年度と同様にアメリカ文学サバイバル研究会月例会でティム・オブライエンのヴェトナム戦争小説群に関する研究報告を重ねながら、それと並行して核をめぐる文学――特に核とともにある現代の生のかたち――について、オブライエンの核小説『ニュークリア・エイジ』の研究に集中した。この作品を読解するにあたって、2018年秋に共著『揺れ動く〈保守〉――現代アメリカ文学と社会』で発表した論文「戯れるアトムとイヴ――ボビー・アン・メイスンの南部原発小説『アトミック・ロマンス』」のなかに著した持続する冷戦ノスタルジアと核の問題が有益な視点をもたらすこととなった。これにより、『ニュークリア・エイジ』のディザスター表象において「冷戦」「ベトナム問題」「家族」という三つの軸が極めて重要であることが分かった。 活字となった業績は少なかったが、30年度は翌年度に向けてのいわばインプットの一年間であったと理解している。この期間に得られた知識や視点は、31年度の研究活動としてすでに決定している日本英文学会全国大会特別シンポジアム「核の時代と文学研究」におけるティム・オブライエン『ニュークリア・エイジ』論の準備にあたって有益な発見を与えてくれるものとなった。現在のところ、オブライエンがこの小説において描いた銃後の60年代が、実はベトナムという戦場と地続きであることが理解できた段階である。 その他、ポストモダン小説にみられるディザスター表象の分野については、これまでに得た知見の一部を『英文學研究』第95巻に掲載された書評(「渡邉克昭著『楽園に死す――アメリカ的想像力と〈死〉のアポリア』」において間接的に反映している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
核文学について調査に時間を要したため、30年度はティム・オブライエンに関する活字となった業績が日本英文学会『第90回大会Proceedings』(2018年)に寄せた「ホームへの帰還――Tim O'Brienのヴェトナム」のみという結果となった。しかし、31年度は日本英文学会全国大会において、オブライエンの作品群のなかでも異質であると考えられてきた〈核の時代〉に焦点を合わせた小説『ニュークリア・エイジ』について発表することが確定している。これをもとに論文を発表できる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はアメリカ文学サバイバル研究会での研究報告の頻度を高めるとともに、冷戦読書会にも積極的に参加することで冷戦期/ポスト冷戦期の問題を広い視野から眺め、課題の円滑な遂行に尽力したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
海外への資料収集を予定していたが実行できなかった。次年度はアメリカ出張を行うとともに、成果発表の場としてシンポジアム等を企画する予定である。
|