本研究では現代アメリカ合衆国の様々なエスニシティの女性作家の作品における娘のアイデンティティの問題、母親との関係性の分析を目的としている。令和元年度は研究期間の最終年に当たり、昨年度の研究や発表中心の国内での活動とは異なり、本年度は国外での資料調査と収集、撮影を中心に研究を計画し、遂行した。アメリカ渡航を2回行い、現地の大学図書館職員や撮影協力者の協力を得て、文献調査や情報交換、撮影を行った。 テキサス州立大学サンマルコス校においてメキシコ系アメリカ人の女性作家サンドラ・シスネロスのコレクション調査を行った。未発表作品を手に入れ、書簡や資料からそれぞれの作品の執筆背景、purple house論争などについて、貴重な情報を得ることができた。また、近年の作品傾向の変化などの論文の着想を得ることができ、その成果は第153回熊本アメリカ文学研究会において口頭発表の予定である。 ハーバード大学においては、カリブ系アメリカ人作家ジャメイカ・キンケイドペーパーのアーカイブ調査を行った。文学作品資料のみならず、写真、手紙、日記、手帳、裁判所文書などを含む膨大な資料から、母親との関係性について新たな事実を発見できた。 他にも全米日系人博物館においては強制収容所の映像などの新たな資料を得ることができ、本研究に関して得た最新の知見は、今後の発表につなげていく。 メキシコ系アメリカ人の男性1名、女性2名に対し、自分のアイデンティティ、バックグランドの文化、母親との関係性などについてのインタビューを行った。練習問題などを付けたビデオクリップ編集を行い、英語教材のプロトタイプを作成した。
|