研究課題/領域番号 |
17K02582
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
中里 まき子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (40455754)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フランス革命 / コンピエーニュ・カルメル会 / ベルナノス / 証言 / 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
フランス革命期の反カトリック政策に抗して、信仰を貫いたために処刑されたコンピエーニュ・カルメル会の16人の修道女は、特にフランシス・プーランクのオペラ『カルメル会修道女の対話』(1957年初演)の題材として知られている。しかし、オペラの元となった文学作品の創作や、革命期から現代まで史実が継承されてきた経緯などについて、総合的な研究は試みられていない。そこで2017年度には、下記の方法により、16殉教修道女の表象の変遷を辿り、そこに映し出されるフランスの社会状況を浮き彫りにした。 まず、第三共和政期に「フランス革命」が国民の共通の記憶とされ、理想化されたとき、16殉教修道女の存在が革命史から排除されたことを、ジュール・ミシュレ『フランス史』等の読解を通して明らかにした。 一方、カトリック世界において16殉教修道女が崇敬の対象となり、その記憶が継承された経緯を探るべく、コンピエーニュ・カルメル会の受肉のマリー修道女が書き残した手記、および16殉教修道女の列福時(1906年)に刊行された書籍等を検討した。 その結果、「共和国の歴史」と「カトリックの歴史」は、いずれも客観的なものではなく、19世紀フランスにおける両陣営の対抗関係を反映するものであることが明らかとなった。こうした研究成果を、日本フランス語フランス文学会東北支部大会において「コンピエーニュ・カルメル会殉教修道女の表象とフランス社会」の題目で発表し、論文として支部会誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンピエーニュ・カルメル会の協力を得ながら文献を収集し、検討することができた。また、研究協力者エリック・ブノワ教授(ボルドー・モンテーニュ大学)と、次年度の研究集会について打ち合わせることができた。
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今後の研究の推進方策 |
偶然により逮捕と処刑を免れ、恐怖政治を生き延びたコンピエーニュ・カルメル会の受肉のマリー修道女が書き残した手記について、下記の方法により、「証言」という視座から検討する。 まず、16修道女の殉教を伝えるマリー修道女の手記を、ロラン夫人獄中記等と対比させることにより、革命期の極限体験の「証言」に見られる特徴を明らかにする。また、マリー修道女の手記を、ジュール・ミシュレによるジャンヌ・ダルクの伝記(『フランス史』第5巻)と比較検討することにより、同時代の二人の書き手が、歴史上の殉教者を理想化するという目的で紡ぎ出したエクリチュールの共通点を浮かび上がらせる。 本研究の成果の発信のために、研究協力者エリック・ブノワ教授と連携して国際研究集会を開催する。また、日本フランス語フランス文学会東北支部大会においてシンポジウムを実施する。
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