研究課題/領域番号 |
17K02586
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
大森 晋輔 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (50599272)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | クロソウスキー / 神の死 / ニーチェ / キルケゴール |
研究実績の概要 |
「クロソウスキーにおける神の死の問題」を検討するにあたり、平成29年度は初期のクロソウスキーの活動に焦点を当てて研究を行った。その結果、これまでの研究ではあまり光が当てられてこなかった、キルケゴール思想との関わりが重要であることに気づいた。 この時期には、戦後の『わが隣人サド』(1947)に収録されることになる重要なキルケゴール論「キルケゴールによるドン・ジョヴァンニ」(1937)が書かれている(1967年の再版時には削除)。当初は1930年代のクロソウスキーのニーチェ解釈を中心に研究する予定だったが、このテクストや、同時期に書かれたニーチェに関するテクスト(カール・レーヴィットのニーチェ論の書評など)では、キルケゴールとニーチェがたびたび対比的に言及されている。これは、キルケゴールとの対峙が、若き日のクロソウスキーにとってそのまま「神の死」の問題に対峙することでもあったことを示すものである。 そのため、テクスト「キルケゴールによるドン・ジョヴァンニ」を中心に、「1930年代のクロソウスキーにおけるキルケゴールの役割」を論じることにし、内外の図書館から資料を取り寄せながら、研究を進めた。そして、2018年2月4日に東京藝術大学音楽学部で開催したクロソウスキー・シンポジウムの冒頭でこのテーマで口頭発表を行った。本シンポジウムでの他の登壇者や来場者とのやり取りはきわめて貴重なものであった。この発表をもとにした論考は、平成30年度内に刊行される予定の論集に収録される予定である。また、同時並行して進めていたいくつかのクロソウスキーの翻訳もここに収録されることになっている。 また、2017年6月には共訳書であるモーリス・ブランショ『終わりなき対話Ⅱ 限界-経験』(筑摩書房)も刊行されており、本研究の間接的な成果と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文のような目に見える成果があったわけではないが、平成30年2月に主催したシンポジウム登壇に向けて、資料収集など十分な蓄えを行った。平成30年度内に水声社から論集を刊行する予定で進んでおり、平成30年度以降に順次アウトプットがなされていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年8月末までに、2月のシンポジウムをもとにした論文「クロソウスキーにおけるキルケゴール(仮題)」を仕上げるほか、同じく8月末までに「クロソウスキーと悪循環(仮題)」というタイトルで、もう一つ論文を仕上げる予定である。また、上記の論集に収録予定の翻訳も順次行う。また5月末を締切として、ミネルヴァ書房から刊行予定の『現代フランス哲学・思想事典』におけるクロソウスキー関連の項目執筆(人名項目1、著作項目5、事項項目5)も行っている。時間の確保が一番の課題であるが、校務とのバランスを取りながら時間を捻出していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予算通りに執行しているが、平成29年度内に執行予定だったパソコンの購入を見送り、平成30年度に繰り越すことにしたため、その分の残額(136,655円)が生じている。
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