研究実績の概要 |
平成29年度はプルーストの「庭園美学」を精査するうえでの準備段階として、西洋庭園史を概観する作業を進めるいっぽう、当該研究の基盤をなすプルーストの風景美学に関する研究発表と論文執筆を行った。 西洋庭園史の概観については、作家の記述を庭園史的文脈のなかで論じる必要性から、主としてMichel Baridon の著作Les Jardins : paysagistes, jardiniers, poetes, Paris, Robert Laffont, coll. ''Bouquins'', 1998)に沿って各時代の庭園の状況と庭園理論書のアウトラインを把握することを目指した。 プルーストの「庭園美学」の遠い源泉としては、テオクリトス、ウェルギリウス、プリニウス等古典古代の作家、またキリスト教の文脈では聖書『創世記』や『雅歌』などが挙げられる。また、これらの文献がプルーストの「庭園美学」との関連を明らかにするため、まずはプルーストが青年期に影響を受けた19世紀末の象徴主義芸術における庭園観に着目し、その研究調査を続行中である。その一環で、プルーストの初期作品と19世紀末フランスの作家や詩人の風景観、庭園美学との比較を試み、成果の一部分を2017年9月の東北大学でのシンポジウム「象徴主義と〈風景〉」にて発表した。 プルーストの風景美学については、ボードレールの散文詩「芸術家の告白の祈り」の受容を調査することで、プルーストの初期作品以来の風景描写に通底する最重要な典拠であることを確認した。その内容を九州大学フランス語フランス文学研究会誌『STELLA』に発表した。
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