研究課題/領域番号 |
17K02588
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
津森 圭一 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70722908)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 象徴主義 / ナビ派 / ヴェルサイユ / 風景 / 庭園 / 建築 |
研究実績の概要 |
2018年度は、フランス近代文学にあらわれる庭園美学の変遷をたどるため、17世紀以降のフランス文学における庭園描写を精査する作業を続けた。とりわけ注目しているのはヴェルレーヌやアンリ・ド・レニエなど19世紀後半の詩人が庭園をテーマにした作品を残していることである。プルーストとこれら象徴派詩人との関連については、従来の調査の成果の一部を、2018年10月に編著『象徴主義と〈風景〉』(坂巻康司、立花史、廣田大地、津森圭一編著、水声社)に発表した。 また、2018年度以降、絵画に描かれる庭園が果たしている役割に着目し、プルーストと同時代人のボナール、ドニ、ヴュイヤールなどのナビ派の絵画作品や、画家が残したメモや理論的な記事の調査を進めている。その内容は、部分的に『ボナール展図録』(国立新美術館)に収録の拙論「ピエール・ボナールとマルセル・プルースト」に発表した。 いっぽうで、プルーストが1904年に発表した論説記事「大聖堂の死」をめぐり、作家の建築美学について研究発表を行い、論文を刊行する機会を得た(「「大聖堂の死」を前にしたプルースト」(岩手大学シンポジウム報告書「証言の時代とそれ以前」)。中世の大聖堂の建造や彫像の制作にたずさわった彫刻家や職人に焦点をあて、中世の建築現場にいた名もなき「芸術家」(職人)が、果たして自由な想像力を行使できたのかという問題について検討した。この問題は庭園の造営においても重要な問題である。建築であれ、庭園であれ、その造営や維持に従事した者たちの存在は、小説を構築していく作家の寓意となっていることの検証を現在の課題とし、考察を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2018年度中は、プルーストの「庭園美学」において、同時代のナビ派の画家たちが果たしている役割にに着目したが、研究開始時において、絵画作品へのアプローチには重点を置いていなかった。したがって、当該分野の文献調査に予想以上の時間を要し、研究が遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
ナビ派の画家たちのプルーストへの影響についての成果を本年9月までにまとめ、本年9月に開催予定の国際シンポジウムにて発表し、論文として刊行する予定である。また、イギリスの美学者ジョン・ラスキンの庭園論がプルーストの庭園美学に及ぼした影響についても、本年11月に開催の国際シンポジウムで発表し、これを論文として刊行する見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に研究の進捗が、文献調査のうえで遭遇した困難のため、当初予定していたよりも遅れ、研究機関を延長せざるを得なくなった。 次年度使用額は、海外(主にフランス)での文献調査、文献の購入、外国語論文のネイティヴチェックのための費用に充当したい。
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